道南エリアの鉄道を「完乗」せよ! 鉄分摂取にもおすすめのフリーきっぷ
函館や大沼国定公園などの観光地が有名な道南エリア。鉄道的には、JRや三セク、路面電車が楽しめるエリアにもあたり、バランスよく鉄分摂取をしたい方におススメの地域なのです。
今回は、「はこだて旅するパスポート」を活用し、道南エリアの鉄道路線をすべて乗りつくす、すなわち「完乗」を目指す旅に出かけます。
駅弁やご当地グルメも抜かりなく摂取するのでご安心を!
- ※新型コロナウイルス感染症の影響により、列車の運休や変更、施設の営業変更等が発生することがあります。JRニュースや運行会社、および各施設のHP等をご確認ください。
公共交通機関が丸ごと乗り放題の太っ腹きっぷ
「はこだて旅するパスポート」はJR線(函館本線 函館駅~森駅)と函館市電、道南いさりび鉄道、それに函館バスが乗り放題になるきっぷです。
有効期間は1日間用と2日間用の2種類が用意されていますが、ダイナミックに移動したい方には、2日間用がおススメです。
また、乗り放題エリアが道南の公共交通機関をほぼ網羅しているため、利用する列車やバスごとに運賃を調べたり、きっぷを購入したりせずとも「はこだて旅するパスポート」を提示すればOKなのも嬉しいポイントです。
今回はきっぷの本領を発揮すべく、道南エリアの鉄道をすべて乗りつくす旅にしてみました。
注目いただきたいのは、北海道駒ヶ岳を囲むようにして線路が分岐している函館本線 大沼駅~森駅の海側ルート、通称「砂原支線」も網羅している点。
函館本線は特急列車が頻回に運行しているものの、砂原支線は普通列車しか運行しておらず、乗りつぶし難易度は少し高めです。
しかし、別途特急券を購入すれば特急列車も利用できるので、移動効率を重視したい方でも使い勝手抜群のきっぷといえます。
はこだて旅するパスポート(JR北海道)
JR(函館本線 函館駅~森駅)、函館バス、函館市電、道南いさりび鉄道線が乗り放題になるフリータイプのきっぷです。
特急券や指定席券などを購入すれば特急列車などにも乗車可能です。
料金:
1日間用 大人2,690円、子ども1,340円
2日間用 大人3,650円、子ども1,810円
発売期間:
2022年3月1日~2023年3月31日まで
利用開始日の1か月前から当日まで、対象の駅で購入できます。
利用期間:
1日間用:2022年4月1日~2023年3月31日
2日間用:2022年4月1日~2023年4月 1日
※2022年4月22日~6月30日は、同効力かつ最大50%割引の「はこだて縄文めぐりパスポート」の利用期間であるため、「はこだて旅するパスポート」は利用できません。
うりば:
函館・五稜郭・桔梗(日・祝休み)・七飯・大沼・大沼公園・森・八雲・長万部・奥津軽いまべつ・木古内・新函館北斗の各駅
「はこだて旅するパスポート」の詳細はこちら(JR北海道HP)
それでは、さっそく「はこだて旅するパスポート」を使ったモデルコースをめぐってみましょう!
<1日目>道南いさりび鉄道に函館市電! まずはJR以外を乗りつくす
- 1日目
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6:32発
東京駅 東北・北海道新幹線 「はやぶさ1号」新函館北斗行に乗車(別料金)
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10:40着
木古内駅
- ポイント① 道の駅 地域の魅力を感じつつ、情報収集!
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12:51発
木古内駅 道南いさりび鉄道 函館行に乗車
- ポイント② 道南いさりび鉄道 景色を楽しみながら、まったり鉄道旅
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13:56着
函館駅
- ポイント③ 摩周丸 青函連絡船の歴史を学ぶ
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15:01発
函館駅前電停 函館市電 湯の川行に乗車
- ポイント④ 函館市電 お次は路面電車を乗りつくす
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15:34着
湯の川電停
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15:44発
湯の川電停 函館市電 函館どつく前行に乗車
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16:28着
函館どつく前電停
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16:33発
函館どつく前電停 函館市電 湯の川行に乗車
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16:40着
十字街電停
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16:53発
十字街電停 函館市電 谷地頭行に乗車
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17:00着
谷地頭電停
- ポイント⑤ 谷地頭温泉 “鉄分”を含む温泉でゆったり過ごす
- ※乗車日によっては発着時刻が異なる場合があります。事前にご確認の上、お出かけください。
ポイント①「道の駅 みそぎの郷 きこない」…道南の情報収集もグルメもお任せ!
2016年3月開業の北海道新幹線に先駆け、2016年1月にオープンした「道の駅 みそぎの郷 きこない」は木古内駅南口正面という、鉄道利用者にとっては大変ありがたい好立地!
館内には地元産の食材を使用したレストランや土産物店があり、地域の魅力に思う存分触れられます。
また観光パンフレットが充実しているほか、観光コンシェルジュも常駐しているので、道南エリアの情報収集でも頼れる存在です。
道の駅 みそぎの郷 きこない
住所 | 北海道上磯郡木古内町字本町338-14 |
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問い合わせ先 | 01392-2-3161 |
時間 | 9:00~18:00、季節により変動あり |
定休日 | 年末年始 |
交通アクセス | JR木古内駅からすぐ |
URL | https://kikonai.jp/ |
ポイント②「道南いさりび鉄道」…津軽海峡の絶景がのんびり楽しめる路線
道南いさりび鉄道は、北海道新幹線 新青森駅~新函館北斗駅の開業に伴い、江差線を引き継ぐかたちで2016年に運行を開始しました。社名は、イカ釣り漁船の漁火(いさりび)に由来します。
沿線は津軽湾沿いの区間が多く、渡島当別駅~茂辺地駅にかけては、対岸に函館山が楽しめます。
車両は、今や貴重になりつつあるキハ40形気動車。クロスシート(向かい合わせの座席)が旅気分を高めてくれます。
乗れたらラッキーなのが、地域情報発信列車「ながまれ号」です。
車両外観には、日没間もない夕闇をイメージする濃紺色に函館山のシルエットを表わしたライン、津軽海峡にきらめく漁り火やスターダストなどがデザインされ、観光列車として利用する際には道南杉を利用したテーブルを取り付けて運行もされます。
「ゆっくりして」「のんびりして」を意味する道南地域の懐かしい方言「ながまれ」のとおり、まったりと鈍行旅を楽しんでみませんか?
ポイント③「函館市青函連絡船記念館摩周丸」…連絡船の歴史を乗って体感
かつて本州~北海道は青函連絡船が重要な交通インフラとしての役割を担ってきました。
函館市青函連絡船記念館摩周丸は、1965(昭和40)年6月30日から青函連絡船最後の日である1988(昭和63)年3月13日まで運航していた「摩周丸」を、当時の乗り場であった旧函館第二岸壁に係留・保存している記念館です。
現役当時の姿を残す操舵室や無線通信室が見学できるほか、展示室に改装された船内には、実物の部品や模型などを展示。パネルや映像で連絡線の歴史を学べます。
函館市青函連絡船記念館摩周丸
住所 | 北海道函館市若松町12番地先 |
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問い合わせ先 | 0138-27-2500 |
時間 | 4〜10月/8:30~18:00、11~3月/9:00~17:00、最終入館時刻は閉館1時間前 |
定休日 | 年中無休(年末年始は短縮営業、船舶検査・修繕工事・特別清掃などで臨時休館あり) |
交通アクセス | JR函館駅から徒歩4分 |
値段 | 大人・大学生 500円、小~高校生 250円、幼児・未就学児 無料 ※「はこだて旅するパスポート」提示で50円引き |
URL | http://mashumaru.com/ |
ポイント④「函館市電」…函館市内の移動は路面電車にお任せ!
函館観光で欠かせない乗り物といえば、路面電車の「函館市電」です。
温泉街である湯の川を起点に五稜郭公園前、函館駅前、十字街を経て谷地頭(やちがしら)までを結ぶ2系統と、途中の十字街で分岐し、函館どつく前までを結ぶ5系統の2つが運行しています。
今回は函館市電全線の「完乗」が達成できるプランとしましたが、湯の川~十字街は日中7分間隔、十字街~谷地頭・函館どつく前は日中14分間隔と運行頻度が高く、気になるスポットでふらっと降りても、次の列車がすぐにやってきます。
また、鉄道趣味の観点からは、バリエーション豊富な車両ラインナップも見逃せません。明治生まれの「箱館ハイカラ號(運行開始延期)」から2007年デビューの超低床車両「らっくる号」までさまざまな車両が活躍します。
今回利用する「はこだて旅するパスポート」は、市電も乗り放題の対象。思う存分乗りつくしてください!
ポイント⑤「谷地頭温泉」…地元密着! 茶褐色の源泉かけ流し
1953(昭和28)年に市営の温泉として開業し、2013年の民営化に伴いリニューアルオープンした谷地頭温泉は、地元の人から愛され続けている日帰り温泉施設です。
函館市電の谷地頭電停から徒歩5分なので、市電乗りつぶしの合間にお楽しみとして組み入れることも可能です。
源泉かけ流しの湯は鉄分を含んだ茶褐色が特徴。
温度ごとに浴槽がわかれているため、熱いお湯が好きな方も、ぬるめのお湯にゆっくり浸かりたい方も、安心して楽しめます。
五稜郭にちなんだ星形の露天風呂もぜひ堪能してもらいたいところ。
館内には食堂が併設されているので、湯上りにはお食事しながらまったりとした一時が過ごせます。
谷地頭温泉
住所 | 北海道函館市谷地頭町20-7 |
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問い合わせ先 | 0138-22-8371 |
時間 | 温泉 6:00~22:00(21:00受付終了) 食堂 平日11:00~14:30/17:00~LO19:00、土日祝 11:00~LO19:00 |
定休日 | 第2火曜日(食堂は毎週火曜日) |
交通アクセス | 函館市電 谷地頭電停から徒歩5分 |
値段 | 大人430円、子ども(7~12歳)140円、幼児(3~6歳)70円、乳幼児(3歳未満)無料 |
<2日目>いざ函館本線へ! テニスラケットのような行程で乗りつくし
- 2日目
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函館駅
- ポイント⑥函館朝市 海産物を買うならここ!
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8:17発
函館駅 函館本線 長万部行に乗車
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9:02着
大沼駅
- ポイント⑦ 山川牧場ミルクプラント 濃厚ミルクと大自然を味わう
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13:12発
大沼駅 函館本線 長万部行に乗車
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13:40着
森駅
- ポイント⑧ いかめし やっぱり人気駅弁ははずせない!
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16:03発
森駅 函館本線 函館行(砂原支線)に乗車
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17:43着
函館駅
- ※乗車日によっては発着時刻が異なる場合があります。事前にご確認の上、お出かけください。
ポイント⑥「函館朝市」…海産グルメが勢ぞろいの巨大市場
函館に来たら絶対食べたいのが新鮮な海産物!
函館駅から徒歩1分の函館朝市は、1万坪の広大な敷地に道内の海産物がずらっと並ぶ、函館屈指のグルメスポットです。
函館朝市でまず立ち寄りたいのは、函館駅西口正面に位置する「どんぶり横丁市場」。海鮮丼などを提供する食堂が軒を連ね、思わず目移りしてしまいます。
早朝から営業しているので、朝食スポットとして最適です。
お腹が満たされたあとは、いざショッピングへ! 「生ものは持ち帰りが……」と不安な方もご安心を。
全国発送にも対応しているので、いつもより豪勢かつ新鮮なお土産にもチャレンジできますよ。
函館朝市
住所 | 北海道函館市若松町9-19 |
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問い合わせ先 | 0138-22-7981 |
時間 | 1~4月/6:00~14:00過ぎ、5~12月/5:00~14:00過ぎ(店舗により異なる) |
定休日 | 年中無休(店舗により異なる) |
交通アクセス | JR函館駅から徒歩1分 |
URL | http://www.hakodate-asaichi.com/ |
ポイント⑦「山川牧場ミルクプラント」…自然のなかで作られた濃厚な牛乳
北海道のイメージとして、雄大な自然とともに牛の姿を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 大沼国定公園近くの山川牧場では、ホルスタイン種とジャージー種の生乳をブレンドした濃厚な牛乳を作っています。
牛舎隣接のミルクプラントにはイートインコーナーがあり、牛乳はもちろんソフトクリームやアイスクリームなど、牧場の美味しさをその場で味わえます。
また、ミルクプラントから大沼国定公園までは徒歩で20分ちょっとの距離。
グルメを楽しんだあとは、北海道駒ヶ岳や湖により構成された豊かな自然の中を散策するのもよさそうです。
山川牧場ミルクプラント
住所 | 北海道亀田郡七飯町字大沼町628番地 |
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問い合わせ先 | 0138-67-2114 |
時間 | 4~10月/9:00~17:00、11~3月/10:00~16:00 |
定休日 | 11~3月/木曜日(祝祭日の場合は翌日)、12月31日~1月3日 |
交通アクセス | JR大沼駅から徒歩10分 |
値段 | 山川牧場特濃牛乳(180ml)150円、ソフトクリーム(バニラ)320円 |
URL | https://www.yamakawabokujo.com/ |
ポイント⑧「いかめし」…出来立ての老舗駅弁
北海道でも屈指の人気駅弁として知られる「いかめし」。
京王百貨店新宿店で毎年開催される駅弁の一大イベント「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」では50年連続販売個数1位を誇り、2021年には史上初の“殿堂入り”を果たしました。続く2022年の第57回大会では、「いかめし」史上初めての“どんぶりモノ”として登場した「3代目のいかめしde丼!」も記念販売。
この「いかめし」の製造を手掛けているのが函館本線 森駅のいかめし阿部商店です。
甘辛いタレがイカのうまみをより引き立たせ、長年人気を誇っているのも納得の絶品グルメです。
出来立ての「いかめし」は森駅前の柴田商店で購入できます。
「いかめし」のふるさと路線でもある函館本線で食べれば、より一層おいしさが引き立ちます。
いかめし
住所 | 北海道茅部郡森町字本町32(柴田商店、以下同じ) |
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問い合わせ先 | 01374-2-2797 |
時間 | 9:00~20:00(売り切れ次第終了) |
定休日 | 不定休 |
交通アクセス | JR函館本線森駅から徒歩すぐ |
値段 | 780円 |
URL | http://www.ikameshi.co.jp/ |
運賃・料金比較(参考)
「はこだて旅するパスポート」だと620円もおトク!
- ※運賃・料金は1人分です。
- ※列車の通常料金はきっぷの運賃です。交通系ICカードを使用した場合は運賃が異なります。
- ※今回のモデルルートで利用する路線の一例です。他の路線等を利用した場合や、乗り方によっては料金が異なります。
「はこだて旅するパスポート」の詳細はこちら(JR北海道HP)
道南ならではの鉄道旅行体験、列車旅の面白さとは?
道南エリアは、バランスよく鉄分が摂取できるので鉄ちゃん初心者にもおすすめのエリアです。
第三セクターの道南いさりび鉄道は津軽海峡沿いの景色が魅力の路線です。弧を描くようにして走るなか、対岸の函館山が少しずつ大きくなる様子は旅情も高まります。
また、函館市内に入れば、「市電」として地元の人に親しまれている路面電車が走っています。函館は町としての美しさ、とりわけ「坂道」に特徴がありますが、ぼんやり眺めた車窓にそれらを楽しむことができます。
そして最後に函館本線。大沼駅から森駅にかけては立派な北海道駒ヶ岳をこれでもかというくらい体感できます。
よりディープに旅を楽しむ鉄ちゃんにとっては、今や全国でも貴重となったキハ40形気動車に好きなだけ乗車できるのが何よりの魅力ではないでしょうか。
向かい合わせのクロスシートは旅情の象徴ともいえる存在。個人的には、寒冷地仕様の二重窓がお気に入りです。
2016年には北海道新幹線 新青森駅~新函館北斗駅が開業し、本州からの距離も一気に縮まりました!
初めて北海道に行く人も、もっと鉄道を深めたい人も、まずは道南エリアから攻めてみてはいかがでしょうか。
著者紹介
- ※写真協力:道の駅 みそぎの郷 きこない、道南いさりび鉄道株式会社、函館市青函連絡船記念館摩周丸、函館市観光部、谷地頭温泉、函館朝市協同組合連合会、有限会社山川牧場自然牛乳、株式会社いかめし阿部商店
- ※文:蜂谷あす美
- ※掲載されているデータは2022年5月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。