連続乗車券や特例を知り尽くして、うまくきっぷを作ろう
皆さんこんにちは。ふつうのきっぷと「トクトクきっぷ」、それにネット予約システムの3つを並べて「どれが一番お得だろうか……」と電卓を叩いている蜂谷です。
ただ、やはり距離の長く複雑な旅、それこそJRのエリアをまたぐような旅では、やはり紙のきっぷに優位性があると信じています! 今回は、きっぷに使われるのではなく、きっぷを使いこなしていくための(細かすぎる)テクをいくつかご紹介します!
「テニスラケット形」や「ちょっとはみ出る」行程では「連続乗車券」がおすすめ ~ただしお得額は0円?~
これまで乗車券は「片道乗車券」と「往復割引乗車券」を紹介してきました。それぞれの特徴を簡単にまとめると以下の通りです。
・往復割引乗車券:行きと帰りが同じ行程で、片道601キロ以上のとき、乗車券代がそれぞれ1割引になる。
片道乗車券は「一筆書きのくねくねとした旅をするとき」、往復割引乗車券はシンプルに「行って帰ってくる旅をするとき」に利用可能性があります。
旅行向け乗車券としてはこれら2種類のほか、ちょっとマニアックですが「連続乗車券」が存在します。
連続乗車券は、区間の一部が重複するために片道にも往復にもできない場合、発券されるきっぷです。「もうちょっとで一筆書きが達成できたのに……」という惜しい状態をイメージするとわかりやすいかもしれません。
以下に具体例を示します。
テニスラケット形の行程例
金沢在住の方が「琵琶湖一周、時計周りの旅」を企てたとします。
このとき経路は「金沢→(北陸本線)→米原→(東海道本線)→山科→(湖西線)→近江塩津→(北陸本線)→金沢」となり、琵琶湖を一周し、近江塩津に到達したところで「一筆書き」は終了します。
そのため、きっぷとしては「金沢→米原→山科→近江塩津」と「近江塩津→金沢」の2枚が必要となるわけですが、これを一緒に購入すると「連続乗車券」として発券されます。
ばらばらに買い求めたときにくらべて、「連続乗車券」はどれくらいお得になるの?
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値段は、まったく変わりませんが、ちょっと嬉しい特典が付いてきます!
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当初の趣旨「お得な旅行」からそれてないか?
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残念ながら、連続乗車券には、運賃面でのお得はありません。
実際、運賃は単純な「足し算」で導き出されます。
<運賃>
・金沢→米原→山科→近江塩津:5,500円(距離312.9キロ、有効期間3日間)
・近江塩津→金沢:2,640円(距離145.2キロ、有効期間2日間)
合計:5,500円+2,640円=8,140円
しかし、悲観してはいけません!
連続乗車券には秘密の特典「有効期間が合算される」が付いてくるのです。
もしきっぷを別々に購入していた場合は「1枚目(金沢→近江塩津)は3日間」「2枚目(近江塩津→金沢)は2日間」ときっぷの行程ごとに有効期間が制限されるところ、連続乗車券であれば「全体で5日間」となり、「1枚目の行程を4日間」「2枚目の行程を1日」などのように、より柔軟な旅程を組むことが可能になります。
もっとも、こうして説明しておきながら、「琵琶湖の周りをこれほどまでにゆっくり回る旅ってどういう状況だろう?」と思ってしまってはいるのですが…。
さらに「損をしない」という観点から言うと、きっぷを払い戻すにあたっては、「1枚あたり220円」かかることから、別々に発券していた場合は2枚分、つまり440円かかるのに対して「連続乗車券」の場合は、1枚として扱われるため、払い戻し手数料は220円で済みます。
連続乗車券は以下のような「ちょっとはみ出る」行程でも有効です。
ちょっとはみ出る行程例①:A駅をスタートし、C駅まで行って、折り返してB駅に向かう場合
この場合、連続乗車券は「A駅→C駅」「C駅→B駅」の2枚になります。
ちょっとはみ出る行程例② :A駅をスタートし、いったんC駅に寄り道してからD駅に向かう場合
この場合、連続乗車券は「A駅→C駅」「C駅→D駅」の2枚になります。ただし、距離次第では「A駅→B駅→D駅」「B駅→C駅」「C駅→B駅」の片道乗車券を購入したほうがお得になることもあるので、事前の運賃計算を抜かりなく行いましょう。
「ちょっとはみ出る行程例①」で、B駅から再びC駅に向かう場合は、『A駅→C駅』『C駅→B駅』『B駅→C駅』の3枚になるのかな
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残念ながら連続乗車券は2枚までしか出せません!
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一筆書き旅程崩壊の危機! 分岐駅通過列車の特例で回避できるかも
~ただし途中下車はNG~
「琵琶湖一周、時計周りの旅」を実際にやってみたいんだけど、どうしても時間がないから湖西線は特急サンダーバードで一気に抜けようかな。あれ? 山科にはサンダーバードが止まらない!! 一駅隣の京都まで向かわないといけないのか……。京都-山科は往復乗車になるから一筆書きじゃなくなるし、連続乗車券は2枚までしかできないから、乗車券が京都で途切れてしまう(涙)
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実は、山科-京都は乗車券不要で乗ることができます。ただし、京都駅で改札を出る、すなわち途中下車はできません
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特急列車を組み合わせて旅していると下図のように、本来ならB駅で下車してC駅方面の列車に乗り換えるべきところ、特急列車がB駅に止まらず通過してしまうため、いったんD駅まで行ったのち、D駅→B駅を折り返して、C駅に向かう場面が出てきます。
例:A駅からC駅に向かう場面
こうした場面では、「A駅→D駅」と「D駅→C駅」の連続乗車券を購入する、または「A駅→B駅→C駅」と「D駅→B駅」の片道乗車券の購入のどちらか安いほうを選ぶのが正解に見えますが、「分岐駅通過列車の特例」を適用させると、「A駅→B駅→C駅」の乗車券だけで済みます。
「分岐駅通過列車の特例」は、この例のように「別の路線と分岐する駅(下車して乗り換えたい駅)を特急列車などが通過する場合、折り返し乗車する区間の運賃は不要」というルールです。
『琵琶湖一周、時計周りの旅』で詳しく見ていきましょう。
この行程で大阪・京都方面から湖西線を経由して北陸に向かう「特急サンダーバード」を利用する場合、山科からいったん京都まで乗車する必要があります。
するとどうしても「山科-京都」の往復が発生し、乗車券は京都駅で途切れてしまいそうなのですが、「分岐駅通過列車の特例」を活用することで、山科-京都の移動は「なかったこと」にでき、最初にご紹介した連続乗車券だけで移動できます(特急券は「京都→金沢」)。もちろんこれは「やむを得ない場合」への手当ですので、たとえば京都駅での途中下車は不可能です。もし京都の魅力にあらがえず、改札を出てしまったら……あきらめて山科-京都の運賃を支払いましょう。
また、こうした対応をしてもらえる駅、区間はJRによって以下の通り定まっています。
新幹線で通過した駅への「ちょい戻り」にも有効!
「分岐駅通過列車の特例」が使えるのは在来線だけではない!
特例区間の一覧を見ていると、特急が走ってない区間もあるけど、これはどういうこと?
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特急列車に限らず、新幹線でも同様の特例が適用されるのです!
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「分岐駅通過列車の特例」は特急列車の例で解説してきましたが、新幹線の場合も有効です。というのも、「乗車券」の視点で見ると、並行する在来線と新幹線は乗車券上「同じ路線」とみなされるためです(一部区間を除く)。
たとえば先の一覧にある「金山―名古屋」の例で見ましょう。
東京から東海道新幹線で名古屋へ、さらにそこから中央本線で移動する場合、金山駅には新幹線は停車しないものの「乗車券」の視点では東海道新幹線と東海道本線は「同じ扱い」とみなされるため、金山―名古屋は往復していることになります。
そのため、金山-名古屋で途中下車をせず、単に乗り換えのためだけに往復する場合は、「分岐駅通過列車の特例」が適用され、乗車券は「東京→金山→中央本線」で計算されます。
まとめ
今回は、乗車券でも、存在感が薄めの「連続乗車券」「分岐駅通過の特例」を見てきました。正直なところ、これらを普段の旅で意識する機会はほとんどないと言っても過言ではありません。
ただ知っていると、行程作成の段階で「あれ?」となった際、非常に有効です。
頭の片隅に入れておいていただけると幸いです!
著者紹介
- ※掲載されているデータは2022年1月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。