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2022.03.17鉄道BEC819系[DENCHA(デンチャ)](JR九州)― どうして電車なのに非電化区間も走れるの?

人と地球の未来にやさしい、次世代の電車!

鉄道ファンといえば新幹線、観光列車に特急列車が好き……。それはもちろんその通り。
しかし日々の通勤や通学を支える普通・快速列車にも、たまらない魅力が隠されています。さながら実家のような安心感と最先端の技術を兼ね備える不思議な存在、それが普通・快速列車なのです。

今回は、JR九州の「BEC819系[DENCHA(デンチャ)]」を紹介します。
BEC819系[DENCHA(デンチャ)]は、2016年10月にデビューした、国内初の交流電化方式の架線式蓄電池電車です。

エコでスマートなその特徴を、じっくり見ていきましょう!

電車のアレが、上がったり下がったり? BEC819系[DENCHA(デンチャ)]の特徴

2枚の写真は、どちらもBEC819系[DENCHA(デンチャ)]です。
同じ車両ですよね。でも、決定的に違うところがあるんです!


行先表示が違います。編成両数も違います。
でも、注目ポイントはそこではなく…、

「パンタグラフが上がっているか下がっているか」が違うんです!
これこそ、BEC819系[DENCHA(デンチャ)]最大の特徴です。

BEC819系[DENCHA(デンチャ)]が電車なのに非電化区間も走れるワケは…

BEC819系[DENCHA(デンチャ)]は、交流電化区間では架線からパンタグラフを通じて電気を取り込み、非電化区間ではパンタグラフを下げて走行できます。
なぜ非電化区間で走行できるかというと、交流電化区間で蓄電池に充電をしているからです。
さらに、非電化区間でも、ブレーキ時の回生エネルギー※を蓄電池に充電します。

  • 回生エネルギー…ブレーキで生じる運動エネルギーを電力エネルギーに変換したもの

床下の蓄電池

BEC819系[DENCHA(デンチャ)]の床下には、たくさんの蓄電池が備えられています。
ここに蓄えられた電力が、非電化区間での走行で活躍するのです。

愛称である[DENCHA(デンチャ)]は、「DUAL ENERGY CHARGE TRAIN」からきています。
デンチャという響きは、乾電池で走る電車のおもちゃのような、かわいらしさと親しみやすさを感じさせます。


BEC819系[DENCHA(デンチャ)]のロゴ

非電化区間を、気動車ではなく電車が走るメリットとはなんでしょうか。
それは、エンジンの騒音や振動、排気ガスがなくなるとともに、エネルギーの有効活用やメンテナンス費の削減ができることで維持費をおさえられることです。
つまり、環境への負荷を大きく減らすことになり、ひいてはその路線の未来にもつながるのです。
2017年にブルーリボン賞を受賞しているのも、そのメリットを評価されてのことです。

青とくろ(ちゃん)が印象的なデザイン

BEC819系[DENCHA(デンチャ)]のデザインは、水戸岡鋭治氏率いるドーンデザイン研究所が担当しています。
前面は、YC1系と同様に黒色。側面は真っ白なベースに、地球をイメージした青色が、ドアを中心に使われています。
白と青の色合いは、環境へのやさしさを表現しているのです。


香椎線 香椎駅に停車するBEC819系[DENCHA(デンチャ)]

車内に目を向けると、やはり青が印象的に使われています。


BEC819系[DENCHA(デンチャ)]車内

木(合板)を用いた座席は、青のモケットと相まって、ここでもやさしさを表現しているようです。
ドアに目を向けると…


BEC819系[DENCHA(デンチャ)]車内ドア付近

あそぼーい!」でおなじみ、くろちゃん発見!
ドアの横にある青と黄色のボタンは、ドアを開閉するための押しボタンです。
車内の冷暖房効果を高めるために、スマートドア(押しボタン式開閉ドア)が採用されました。

また、ドア上部にはマルチサポートビジョン(MSV)が配置されています。
停車駅や乗換案内、スマートドアの案内等を表示しますが、それだけではありません。


「ただいま、電池のエネルギーで走行中!」

「ブレーキで発生したエネルギーを充電中!」

最初にご紹介した、「電化区間では蓄電池に充電し、非電化区間では蓄電池の電力で走行」といった電力のフローが、このマルチサポートビジョンで案内されます。
これを見ているだけで、すぐに目的地に着いてしまいそうですね。

BEC819系[DENCHA(デンチャ)]はどこを走っている?

2016年10月から筑豊本線(若松線)折尾駅~若松駅【非電化区間】で運転開始。
2017年3月からは、若松線の全列車がBEC819系[DENCHA(デンチャ)]になるとともに、筑豊本線・篠栗線(福北ゆたか線)折尾駅~桂川駅~博多駅【電化区間】でも運転しています。
2019年3月には、香椎線 西戸崎駅~宇美駅【非電化区間】のすべての列車がBEC819系[DENCHA(デンチャ)]に置き換えられました。
2020年3月からは、香椎線から博多駅への直通列車が運転開始になっています。


筑豊本線(若松線) 奥洞海駅~二島駅間


香椎線 雁ノ巣駅付近


鹿児島本線・篠栗線 吉塚駅付近

架線のない区間に「電車」が走る…少し前には考えられなかったことが、こうして実現しています。
環境負荷も、維持費も減らす蓄電式電車BEC819系[DENCHA(デンチャ)]に乗って、明るい未来を見てみませんか。

  • トレたび編集室/編
  • 写真/交通新聞クリエイト
  • 掲載されているデータは2022年3月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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