五感をフル稼働して自然の恵みを満喫
木曽郡王滝村は長野県の最西部に位置し、霊峰木曽御嶽山の南山麓に広がる美しい風景や自然を活かした魅力的なアクティビティが充実しています。そのシンボルである御嶽山(標高3,067m)は、修験者らによる登山(登拝という)が室町時代から盛んに行われてきた信仰の山。江戸時代の1792年に王滝口登山道が普寛行者により開かれたことにより広く一般登山客にも御嶽山登山が親しまれるようになりました。山頂へと続く麓からの登山道は御嶽古道とも呼ばれ、登拝前に心身を祓い清める滝行は今も行われています。今回はこの王滝村を訪れ、圧倒的な自然に畏敬の念を抱きつつ、その恵みを積極的に味わう「アクティブ・レストな1日」を紹介します。
- ※上の写真は、自然湖(提供:NiRo)
秋の湖と滝を巡るモデルコースをご紹介!
旅の起点は王滝村観光案内所から
電車とバスを乗り継ぎ、王滝村観光案内所にて情報収集。中央本線・木曽福島駅からバス40分とアクセスには下調べを要しますが、それがかえって冒険心をくすぐります。珍しい景色を満喫するため、今回は気ままに移動できるE-BIKE(電動アシストつき自転車)で周遊します。E-BIKE(電動アシストつき自転車)は王滝村観光案内所で借りることができます。ご利用の3日前までにご予約ください。
御岳湖(牧尾ダム)
まず最初に向かったのは御岳湖。1961年に愛知用水の水源(牧尾ダム)として誕生しました。以来、半世紀以上にわたり豊かな水資源を濃尾平野の東部から知多半島まで引き、愛知・岐阜の27市町の田畑(約15,000ha)に供給しています。今年の紅葉は遅れ気味とのことでしたが、心地よい風を感じながらカヌーを楽しむ人々の姿が見られました。
御嶽神社 里宮
御嶽山「王滝口」は1792年に普寛行者によって開かれました。登山道脇には「霊神碑」と呼ばれる石碑がいくつも建ち並び、周辺には神社・仏閣が点在。この地が御嶽信仰の聖地であることを無言で語りかけてくるようです。王滝口1合目にある御嶽神社は、御嶽山山頂の「御嶽山座王大権現」を祀る里社。石鳥居をくぐり、苔むした石段(451段)を登ると、切り立った立岩の下に里宮の社殿が現れます。「信州の名水・秘水」認定の湧水で喉を潤しました。
清滝
高さ40mの谷合から轟音をとどろかせ流れ落ちる清滝。古くから御嶽山を信奉する行者が御山に登拝する際に必要とされる百日間の精進潔斎する行場でした。往時から信者が最も滝行を行った滝で、清滝不動明王、清滝弁財天が祀られています。朱色の欄干を渡ると空中を舞う水沫が頬にあたり、心身が洗い清められた気持ちになります。
新滝
流れ落ちる滝の裏側に小さな岩祠があり、そこから滝を眺めることから「裏見滝」とも呼ばれています。御嶽山登拝の前に心身を清め、修行した神聖な場所です。冬には繊細な氷柱となって、一層神秘的な表情に変わります。
旅先でみつけた王滝グルメ
澄んだ空気を胸いっぱい吸い込み、身体を動かしたらお腹が空いてきます。清滝・新滝周辺でみつけた美味しいお店を紹介します。
そば処さくら
ジャズが流れる店内は落ち着いた雰囲気で、地元の方に親しまれる憩いのスポット。長野県産の風味豊かな石臼びきそばを堪能しました。
ララカレーオンタケ
木漏れ日が差し込む店内でいただくスリランカ風カレー。スパイシーなスープカレーを色鮮やかな野菜・ご飯と一緒にいただく、やみつきになりそうなカレーです。
ひめや
開店前に行列ができるほどの人気スイーツ店。焼きたてアップルパイは、「サクッ♪」「トロっ!」「ジュワ~♡」の三重奏が口の中に広がる、売切御免の看板商品です。
自然湖
お腹も満たされたので、午後は少し足を延ばして自然湖を目指します。
(道中、野生の猿の群れに遭遇しましたがビックリして写真を撮り忘れてしまいました)
自然湖は、今から約40年前の長野県西部地震により、御嶽山から崩落した大量の土石流が渓谷に流れ込み、村名でもある王滝川の流れをせき止めて生まれた天然湖。湖下にはかつての風光明媚な滝と渓谷が埋没しているそうです。穏やかな湖面に立ち木が屹立する神秘的な佇まいは上高地の大正池を髣髴させ、四季を通じて写真愛好家が訪れる絶景スポットとして知られています。断崖絶壁の秘境を行く森林浴カヌーツアーも人気です。
「自然湖ネイチャーカヌーツアー」ガイドの二宮さん。ツアー客にカヌーやパドルの扱い方を丁寧にレクチャーしながら、自然湖の歴史や魅力を情熱的に語ってくれます。
立ち寄りスポット(長野県製薬)
御岳百草丸
御嶽登山道を開いた寛明、普寛行者により伝えられた御神薬。御嶽山で採れるキハダの内皮(黄柏:オウバク)から抽出したエキス(百草)が主成分で、胃腸の調子を整えるほか、眼病、捻挫、打撲など「百の病を治す万能薬」として長年親しまれています。百草元祖の碑からも山の暮らしに根付いた地場産業であることを再認識しました。
アクティブ・レストな1日を終えて
今回はパワフルなE-BIKEに助けられ、王滝村の自然を五感フル稼働で満喫しました。山から沁み出た湧水が、滝や川となり人々の暮らしを支えていることに改めて気づかされ(清滝・新滝)、私たちの時間軸では測れない地球規模の変化に触れ(自然湖)、自然の脅威、人の営みの儚さも感じました。
途中、リュックを背にトレッキングを楽しむ外国人旅行者と出会いました。彼らの旺盛な好奇心と行動力に私たちも学ぶべきかもしれません。王滝村には百名山の御嶽山と二百名山の小秀山があります。あなたも好奇心の赴くまま身体を動かして、心を満たす旅に出かけてみませんか。
旅のしおり
行き
(特急しなの1号)
7:00名古屋発~8:28木曽福島着
(バス)
9:03木曽福島発~9:40王滝着
=E-BIKEで周遊=
帰り
(バス)
16:42王滝発~17:20木曽福島着
(特急しなの20号)
17:31木曽福島発~19:07名古屋着
- ※協力:王滝村観光案内所、合同会社NiRo
- ※取材・文:トレたび編集室/編
- ※撮影:トレたび編集室/編
- ※掲載されているデータは2024年11月1日現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。