列車の待ち時間を利用して沿線を散策
名古屋と大阪・難波を結ぶ関西本線。その両端の名古屋~亀山間、加茂~JR難波間は、名古屋・大阪の都市圏輸送を担う電化区間。一方、その狭間となる亀山~加茂間(12駅)は1時間に1本ペースでディーゼルカーが走るローカル線です。
今回は「JR関西線12駅途中下車の旅きっぷ」発売にあわせ、沿線にある美しい景観や名所・旧跡、鉄道遺産などをめぐる途中下車の旅にチャレンジします。平均1時間の待ち時間を活かせるプランを立て、気になった笠置・月ケ瀬口・柘植・関・亀山の5駅を選択。頭と身体を駆使しながら沿線の魅力に迫ります。
- ※上の写真は、JR関西線・東海自然歩道・木津川の3線が並走する渓谷美(提供:トレたび編集室)
JR関西線12駅メモ
亀山駅~加茂駅間(開業1897年)は山間部が多くを占める非電化区間。気動車(ディーゼルカー)が山を抜け、峠を越え、田園地帯をゆっくりと走り、ローカルな趣と自然豊かな景観が楽しめます。沿線には東海道47番目の宿場町「関宿」や、伊賀流忍者発祥の地、巨岩・奇石の景勝地、お茶の産地など、魅力的な観光資源が存在しています。
「JR関西線12駅途中下車の旅きっぷ」おすすめポイント
- 1.往路の加茂駅~亀山駅は何度も途中下車OK!(後戻りはできません)
- 2.地元のカフェやお土産店で使える1,000円(500円×2枚)クーポン付!※電子チケット
- 3.おとなお1人様からご参加OK!
- 4.お申し込みは利用日の7日前12:00まで受付OK!(日本旅行TiS大阪・京都・天王寺の各支店でお申し込みの場合は4日前まで受付OK)
- 5.関西発(大阪駅・三ノ宮駅・神戸駅・京都駅)中部発(名古屋駅)からご参加いただけます。
対象区間
―〇―〇―〇―〇―〇―〇―〇―〇―〇―〇―〇―〇―
加 笠 大 月 島 伊 佐 新 柘 加 関 亀
茂 置 河 ケ ケ 賀 那 堂 植 太 山
原 瀬 原 上 具
口 野
加茂駅~亀山駅間のモデルコースをご紹介!
12月〇日(晴れ)加茂駅9:40発
笠置駅(9:47着-10:48発)
かつては大阪からの湯治客らで賑わった温泉街はモータリゼーションの進展とともに規模を縮小しましたが、木津川沿いに広がる美しい景観は健在。河川敷でBBQを楽しむキャンパーやボルダリングに挑戦する方々で賑わいをみせています。
駅から笠置大橋を左手に眺めながら東海自然歩道沿いを歩くと、まず目に入るのが笠置キャンプ場。約3万㎡のオートキャンプ場です。下流に目を向けると巨岩が連なりボルダリングに興じる人の姿が見えました。さらに奥へ進むと関西線と遊歩道、木津川が並行する姿を眺めることができます。今日はここまで、駅に戻ることとします。
月ケ瀬口駅(11:02着-12:03発)
次に降りたのは月ケ瀬口駅。駅から徒歩7分程の小高い山の中腹にある「ガーデンカフェミーム」を目指します。およそ50年かけて店主親子自らが切り拓いた森の中に佇むカフェレストラン。熱々の鉄板の上に盛られたボリュームたっぷりのナポリタンと自家製生地が香ばしいピザを落ち着いた店内で堪能したら、後ろ髪を引かれつつ駅に戻ります。
柘植駅(12:38着-13:42発)
草津線への乗換駅となる柘植駅は三重県で最初の鉄道駅として誕生(1890年)、客貨の要衝の役割を果たしました。ここから徒歩約20分の徳永寺を目指します。
家康公、伊賀越えゆかりの寺として知られる徳永寺。1582(天正10)年に起きた本能寺の変の直後、和泉国堺にいた徳川家康公は、自身に迫る危機を察し、秘密裏に伊賀を越え三河国岡崎に逃れる際に、この寺に立ち寄ったとされます。住職が献じた一服の茶に感銘を受け、恩賞を与えたと伝えられています。
まだ少し時間があるので駅前の喫茶店「中村屋」へ。さりげなく置かれた蒸気機関車の写真集(「関西本線のSL -1972-」)を眺めながら、ご店主夫妻に当時の話をうかがいました。柘植-加太間にある加太トンネルは25‰(パーミル)連続上り勾配の難所で、トンネル手前にはスイッチバックの形跡である旧中在家信号場もありました。特に「加太越え」と言われるカーブした大築堤は、当時鉄道ファンから「お立ち台」と呼ばれた人気撮影ポイントで、蒸気機関車の雄姿をカメラに収めようと全国から多くの方で賑わったそうです。
乗車時間を気遣うご夫妻に感謝しつつ、美味しい特製ビーフカレーをいただきました。
関駅(13:59着-15:59発)
関宿は言わずと知れた旧東海道の宿場町。参勤交代や伊勢参りの人々で賑わいました。江戸(日本橋)から京都・大阪を結ぶ東海道の宿場町の多くが時代とともに変貌するなか、関宿は歴史的な町並みが残ることから、1984(昭和59)年、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。地元の方々の力により、当時の建築・風景が現在も保たれています。「関宿 旅籠玉屋歴史資料館」「関まちなみ資料館」をご案内いただいた亀山市観光協会の本間さんによると、関宿の景観を守り続けるためには若い世代の力が必要とのこと。この地に惚れ込んだ方が移住を決意し、先代の想いを受け継いで、診療所をカフェ併設の古民家ゲストハウスに甦らせた、というお話が印象的でした。(関宿で2時間滞在)
亀山駅(16:05着-17:43発)
亀山駅に到着。町のシンボル亀山城に向かいます。残念ながら天守は失われましたが多門櫓が在りし日の姿を髣髴させます。城を中心に城下町ができたことが理解できます。
ここから17:43発の列車で折り返し加茂駅19:06着
旅を終えて
スマホと沿線マップを手に駆け足で巡る「お試し旅」でしたが、街道観光、歴史散策、鉄道遺産めぐり等、JR関西線(亀山~加茂間)沿線の魅力を直接感じることができました。「駅を降りたら散策、電車の中で車窓風景を楽しみながら休憩」の繰り返しはゲームやスポーツに似た感覚で、ゴールの亀山駅では達成感を味わうことができました! 鉄道に乗る≒受動的に運ばれるではなく、能動的に鉄道を活用することで新しい楽しみ方が見つかった気がします。
今回ご紹介した他にも「JR関西線12駅途中下車の旅」のおすすめ散策コースや魅力あふれる沿線市町村の観光情報を詳しくご案内しています。あなたも気になる場所を見つけて、沿線散策の旅にでかけてみませんか。
- ※協力:三重県観光連盟
- ※トレたび編集室/編
- ※掲載されているデータは2024年12月16日現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。