2025.07.14旅行福島県・浜通りエリアは、穏やかな気候と海の幸が魅力!食べて飲んで観て考えて、未来をつくる旅に出かけよう
夏は涼しく冬は温暖なフルーツ王国へ
福島県は太平洋側から浜通り、阿武隈山地を挟んで中通り、さらに奥羽山脈を挟んで会津地方と、大きく3つに分かれ、エリアごとに気候や文化など異なる特徴をもちます。さらに細かく分けると県北、県中、県南、会津、南会津、相双、いわき……と7つのエリアになるのですが、それぞれの魅力はまた改めて。
今回トレたび編集室が取材した浜通りは、この広い福島県の中でも比較的気候が安定しており、夏は海風が涼しく冬は温暖な非常に過ごしやすい地域。せっかくなら、浜通りならではの体験やグルメは逃したくない! でも、最近の注目スポットも気になる……。そんなあなたにおすすめスポットを厳選してお届けします!
浜通りへはどう行く?
特急「ひたち」
都内から福島県・浜通りエリアへ向かうには、JR常磐線の利用が便利! 東京駅・上野駅を出発する特急「ひたち」で快適に移動ができます。
特急「ひたち」は、車体に水戸の偕楽園をイメージした鮮やかな紅梅色を配し、車内シートには水戸の梅や霞ヶ浦のうねりを表現した柄があしらわれた優美な車両が特徴です。
スパリゾートハワイアンズや白水阿弥陀堂などで知られるいわき市の中心地、いわき駅には上野駅から特急「ひたち」で2時間ほど、相馬野馬追で有名な相馬駅には3時間30分ほどでたどり着けます。ゆったりとしたリクライニングシートに身を任せて、浜通りまでの車窓を楽しみましょう!
浜通りに行くならまずコレ! 5選
見る!【あぶくま洞】
あぶくま洞は、1969年(昭和44)、石灰岩採掘中に偶然発見された日本有数の鍾乳洞。阿武隈高原中部県立自然公園内に位置しており、周囲の山々を見ると、なるほど石灰岩特有の白い岩があちらこちらから顔をのぞかせています。
写真中央が「観音像」。左側が「さるの腰掛」。ほかにも「竜宮殿」「クリスタルカーテン」などがある
狭い道を歩いていくと、あぶくま洞公開部最大のホール・通称「滝根御殿」に出る。湿度はあるが涼しく、夏にはぴったり
全長4218.3m、公開部600mの洞内には、大小さまざまな形の鍾乳石が数多くあります。鍾乳石にはそれぞれ、妖怪の塔、観音像などユニークな名称がつけられており、特徴的な見た目の岩と、頭の中の地図を照らし合わせて現在地を把握しているのだとガイドの伊藤さん。
「下から生えているものを石筍(せきじゅん)、上から下がっているものをつらら石、つらら石と石筍がつながったものを石柱と呼びます。あぶくま洞の鍾乳石は数㎜成長するにも数十年かかるので、石筍が石柱になる姿を目にできるのはおそらく来世になってからですね」
親しみやすい伊藤さんの解説を聞きながら歩いて数分、公開部では最大のホール「滝根御殿」に到着。大小さまざまな形の鍾乳石を観察できるメインスポットで、ただ見学するだけではなく、壁面に映像を投影して野球のパブリックビューイングや、声優のファンミーティングなど多様なイベントを開催しているのだとか。たしかに音の反響も良くて盛り上がりそうです。
見学は一般コースと探検コースに分かれていますが、一般コースでも狭い道あり、急な階段ありと十分に冒険した気分になります。身長152㎝の筆者はギリギリ頭を下げずに通れましたが、高身長の方は頭上注意。足元も濡れているので気を付けて。動きやすい服装と靴で探訪するのがおすすめです。
左側の「樹氷」は石柱、右側の「クリスマスツリー」は石筍
年間を通して温度と湿度が保たれているという性質を生かし、ワインやウイスキーの貯蔵も行っている
ウイスキーは売店で購入可能。商品名にもなっている「963」はこの地域の郵便番号から取っている
あぶくま洞
住所 | 福島県田村市滝根町菅谷字東釜山1 |
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問い合わせ先 | 0247-78-2125(あぶくま洞管理事務所・レストハウス釜山) |
時間 | 8:30~17:00(冬季は16:30) |
交通アクセス | JR常磐線いわき駅から磐越東線で約60分の神俣駅下車、タクシーで約10分。または、JR郡山駅から磐越東線で約40分の神俣駅下車、タクシーで約10分。 |
値段 | 一般コースは大人1200円、中学生800円、小学生600円。探検コースはそれぞれ追加300円。 |
URL | https://abukumado.com/ |
飲む!【かわうちワイナリー】
15,500本のぶどうの樹が植えてある
川内村では東日本大震災の復興、新たな産業(農業)への挑戦、観光・交流人口の拡大及び移住・定住につなげるプロジェクトを行っており、これまでにも約500人が移住しさまざまな取り組みを行ってきました。この「かわうちワイナリー」もその過程で誕生した企業の一つです。苗木の植え付けが始まった2016年から、醸造施設が完成するまで多くの人がかかわりました。
ワイナリーにお邪魔したのは発送作業の真っ最中。施設の見学も受け付けており(要問合せ)、施設の説明や、広大なぶどう畑に立ち入って品種の説明を受けることもできます。
「ワイン用ぶどうの新芽って実は美味しいんですよ」そう語るのは栽培・醸造責任者の安達貴さん。安達さんは2020年に川内村に移住し、この地でワイン作りに挑戦してきました。
「この新芽を天ぷらにして、お客さんに食べていただくイベントをやったこともあるんです」。シャルドネやメルローなど、それぞれぶどうの樹によって苦みがあったり酸味があったりと、葉の味にも違いがあるそう。とても魅力的なイベントですが、ワイン用ぶどうの新芽に出合えるのは5月上旬~中旬の僅か2週間ほど。このレアな味覚に出合えた人はとてもラッキーですね。
「ワインボトルの封蝋体験」。ワックスにそっとボトルを入れて、タイミングが良いところで引き上げる
醸造施設は2021年に完成。施設内でワインを購入することも可能だ
そして今回の見学では、「ワインボトルの封蝋体験」に参加。ツアーや団体でワイナリー見学をしたときに“運が良ければ”出合えるイベントなのだとか。
ワインボトルのラベルと同じ色に調合したワックスを、ボトルの口とコルクを覆うようにつけたらゆっくり引き上げます。しばらく止めて、ワックスが落ち着いたら回しながら持ち上げると、きれいな封に。説明だけだと簡単に聞こえますが、空気が入ってしまったりワックスの厚みが不均一になってしまったりと結構な難しさで失敗する体験者が続出。でもご安心を、失敗した蝋は溶かして何度でも再利用できるので、気負わずにチャレンジできます。このイベントにめぐり合えた人は積極的にチャレンジしてみるのがおすすめです!
安達さんをはじめ、多くの方が大切に作り上げたかわうちワイナリーのワインは、川内村の飲食店でも味わうことができます。“川内村の美食”を探しに、村内を訪ねてみてください。
かわうちワイナリー
住所 | 福島県双葉郡川内村大字上川内字大平2-1 |
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問い合わせ先 | 0240-25-8868 |
時間 | 要問合せ |
定休日 | 要問合せ |
交通アクセス | JR常磐線いわき駅から磐越東線で約60分の神俣駅下車、車で約70分 |
URL | https://kawauchi-wine.com/ |
体験する【東日本大震災・原子力災害伝承館】
1階にシアター、2階に展示室がある
「ホープツーリズム」という言葉が生まれたのは2016年。被災地のありのままの姿を体感すること、復興に向けて歩み続ける人々と対話すること、震災・原発事故の教訓をどのように生かせるか考えることを目的とした探究型のスタディーツアープログラムで、福島県が推進しています。近年修学旅行に取り入れる学校も増えており、ここ「東日本大震災・原子力災害伝承館」にも多くの学生が訪れています。
津波の威力を今に伝える展示物(写真提供:東日本大震災・原子力災害伝承館)
大きな窓の向こうには太平洋を望む
「東日本大震災・原子力災害伝承館」は、東日本大震災、そして東京電力福島第一原発事故というかつてない複合災害の記録や教訓、そこからの復興のあゆみを国内外に伝え、将来へ引き継ぐため2020年9月20日に開館しました。
1階のシアターでは昨年10月に逝去した俳優・西田敏行さんのナレーションとともに、東日本大震災と福島第一原発事故、住民の避難、復興までの歩みを7面スクリーンで上映。故郷である福島への思いを語る西田さんの声に心を揺さぶられながら次の順路へと進むと、津波の威力をものがたる実物資料、被災前後の町の姿を映した写真などが掲示された展示室へ。原発事故直後の発電所の様子を克明にとらえた音声も、当時の状況を生々しく伝えています。
それぞれの被災経験を伝える語り部たちの講話は1日4回開催しており、こちらも必聴です。
「自分のこととして考え続けること」。それがよりよい未来のためにできる第一歩だと実感できるはずです。
東日本大震災・原子力災害伝承館
住所 | 福島県双葉郡双葉町大字中野字高田39 |
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問い合わせ先 | 0240-23-4402 |
時間 | 9:00〜17:00(最終入館は~16:30) |
定休日 | 火(祝の場合は翌平日) |
交通アクセス | JR常磐線双葉駅から徒歩約25分(双葉駅からシャトルバス約6分) |
URL | https://www.fipo.or.jp/lore/ |
泊まる【遊学の宿いさみや】
自然豊かな松川浦で非日常な体験を!
令和4年の福島県沖地震で大規模半壊となりましたが、昨年8月に復活。これを機に「ここでしかできない体験」をしてもらおうと、非日常をテーマにした宿「遊学の宿いさみや」に生まれ変わりました。宿泊だけでなく体験プランが盛りだくさんで、たとえば若旦那が操縦する船でめぐる松川浦クルーズや、黒竹1本から作るマイ笹竹つり竿のレクチャー、その竿を使った釣り体験など盛りだくさん。ここに泊まれば豊かな海を目いっぱい堪能できる1日になること間違いなし!
そして、なんといってもお楽しみは浜焼き体験です。
夕食の時間になったら宿泊棟からすぐ近くの浜焼き小屋に集合!
「電気を消すと火が映えるよ」と消灯してくれた若旦那。炭火の色がイイ感じ
秘伝のタレをつけた香ばしい焼きおにぎり
フロントにはシャンプーバーや、自由に使えるドリンクバーが設置されている
松川浦の浜焼きは、尾頭付きの魚を丸ごと串に刺し焼き上げるのが特徴だそうで、若旦那が魚やイカの刺し方を軽妙なトークとともに丁寧に教えてくれます! 新鮮な魚って硬いんだな……と試行錯誤しながら自分で串に刺して焼いた魚の味は格別。オールインクルーシブで飲み放題のビールと一緒に流し込めばもう最高。その日に水揚げされた魚介はどれも鮮度抜群で、まさにここでしか味わえない絶品でした。
ほかにもいろいろな海鮮・一品料理が提供されますが、最後のシメに提供される「秘伝のタレ特製焼きおにぎり」の香ばしさと米の旨さがなんともたまりません。満腹になったらお部屋でまったりするも良し、お風呂に行くも良し。お風呂あがりにいただけるプチアイスも忘れずに!
遊学の宿いさみや
住所 | 福島県相馬市尾浜字平前109 |
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問い合わせ先 | 0244-38-8216 |
交通アクセス | JR常磐線相馬駅から福島交通バス松川浦・原釜循環線約15分の平前停留所下車すぐ |
URL | https://www.ryokan-isamiya.com/index.htm |
体験する【ワンダーファーム】
ハウスの中は広々! トマト収穫体験プランは1人1500円~。
2016年5月にグランドオープンした「ワンダーファーム」は、一年中トマト狩りができる国内でも珍しい施設です。
ハウスの中は自然光が入って明るく、キラキラと輝くトマトが出迎えてくれます。トマトは数種類栽培しており、なかでもおすすめの品種は甘みの強い「フラガール」。特有の青臭さやえぐみがほぼなく、トマトが苦手な人やこどもでも食べられそう。
園内のレストランでは採れたてトマトや地域食材を使用したフレンチ&イタリアンを楽しめます。直売所には新鮮なトマトをはじめ、搾りたてのトマトジュースや加工品がずらり。
さらに併設しているカフェではトマトソフトクリームが販売されています。トマトの酸味と濃厚なミルクの甘みが絶妙で、トマトの新たな美味しさに驚く一品です。
赤、オレンジ、黄色など多様なトマトがそろうマルシェ
とまと味噌はトマトの味が濃厚!米にもパスタにもマッチする
BBQスペースやキャンプエリア、季節の花々が咲き乱れるガーデンもあり、丸一日いても飽きることなく楽しめます。
見て、触れて、農業や食を体験できる「トマトのテーマパーク」でワンダーな思い出を作りましょう!
ワンダーファーム
住所 | 福島県いわき市四倉町中島字広町1 |
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問い合わせ先 | 0246-38-8851(森のマルシェ) |
時間 | 各体験・施設ごとに異なる |
定休日 | 各体験・施設ごとに異なる |
交通アクセス | JR常磐線いわき駅から約9分の四ツ倉駅下車、車で約15分 |
URL | http://www.wonder-farm.co.jp/ |
チャレンジを続ける人々の思いと、豊かな自然に触れる旅へ
地震と津波、原子力発電所の事故という複合災害を経験しながらも、前を向いてチャレンジを続ける福島県・浜通り。そこに暮らす人たちの思いとパワーが詰まった観光地では、昔と変わらない景色や名所、そして新たな名産品にも出合えます。特急「ひたち」に乗って、“しあわせの風ふくしま”へ行こう!
- ※写真撮影/トレたび編集室、湯淺玲奈
- ※掲載されているデータは2025年5月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。