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2017.09.05旅行旬たび☆日本列島 三重

もう知ってる、まだ知らない、伊勢志摩へ

常世の海を見つける旅

伊勢志摩サミットで世界から注目された伊勢志摩。7カ国の首脳たちが参拝した伊勢神宮、サミット会場となった英虞(あご)湾のホテルは多くの人が知るようになったが、伊勢志摩にはまだまだ知られていないスポットがある。美しい海岸線が続き、海の幸が豊かな伊勢志摩は、今から約2000年前、「常世(とこよ)の浪(なみ)が打ち寄せる」と神さまがお選びになり、伊勢神宮内宮が創建されたという。常世とは理想郷という意味。伊勢志摩に理想郷につながる海を見つけに行こう。

※写真は鳥羽と志摩を結ぶパールロード。

Plan 1  アクティブ派なら

島から志摩へ、伊勢へ、海の匂いを感じて

名古屋から伊勢志摩の海の玄関口となる鳥羽(とば)へ。駅から歩いていくと船乗り場の「鳥羽マリンターミナル」がある。眼前に広がる鳥羽湾にはいくつも島が浮かぶが、遠くに望む三角形の島が、「神島(かみしま)」だ。定期船で海をわたること約40分。三島由紀夫の小説『潮騒』の舞台になった島には、今も変わらずにゆかりの地が残り、そこにはゆったりとした時が流れる島時間がある。三島はこの島に原初的な理想郷を見たのだろうか。

島から志摩へ。海岸線を夜、小さな灯りでふちどるのが、志摩市浜島町の「ビン玉ロード」だ。浜島は世界で初めて伊勢えびの人口ふ化に成功した町。毎年6月には「伊勢えび祭り」が盛大に開催される。海岸沿いの遊歩道には漁網の浮きに使っていたガラスのビン玉が並べられ、夜にはそのビン玉に明かりがともる。

神話ゆかりの地もある。内宮の祭神、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が隠れたという「天(あま)の岩戸」と呼ばれる洞穴だ。神宮の山に続く志摩市磯部町にあり、うっそうと茂る杉木立のなか、洞穴からこんこんと湧き出る岩清水は古くから地元で大切にされている。

船によって運ばれてきた物資が集まったのが、伊勢市勢田(せた)川沿いの問屋街「河崎(かわさき)」。河岸には土蔵が建ち並び、「伊勢の台所」と呼ばれた。古い商家や土蔵が残る町並みは、海と伊勢を結んだ歴史を物語る。


  • 1.伊勢湾口に浮かぶ、周囲4キロのほどの神島。ゆっくり歩いても2時間ほどだ。海の難所である伊良湖(いらご)水道を守る白亜の神島灯台は、島随一のビュースポット。巨大なタンカーやフェリーが行き交う様子が見えることもある
  • 2.熊野灘に面したビン玉ロード。近年は、灯りもLEDに変わり、長持ちするように。ロマンチックな道をゆっくり歩きたい
  • 3.地元では「恵利原(えりはら)の水穴」と呼ばれる、天の岩戸の洞穴。そこから流れる岩清水の下には禊(みそぎ)滝がある。洞穴前の楠の木は、真珠養殖に成功した実業家の御木本幸吉(みきもとこうきち)が植えたもの
  • 4.伊勢の勢田川沿いに発達した問屋街「河崎」。水運を利用した物資の集積地で、伊勢参宮の人々の食料などを賄った。今は伊勢春慶(いせしゅんけい)の工房やカフェにリニューアル

神島

島をめぐるには歩くしか手段がないので、運動靴がべスト。旅館や民宿があり、宿泊も可能。

交通アクセス
鳥羽駅から徒歩約7分の鳥羽マリンターミナルから鳥羽市営定期船で約40分の神島港下船。一日4便、片道730円

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Plan 2 歴史と文化に触れるなら

漁師や海女が信仰する神社と龍神伝説の寺

志摩半島の海辺には、漁業を生業とする漁師や海女達が住んでいる。「板子一枚下は地獄」といわれるように、大自然の海での仕事は天候の急変や潮の流れなど一つ間違えば命に関わるとあって、漁師や海女は昔から人一倍信心深い。大海原に面した片田稲荷(かただいなり)神社は、本殿にある野村訥斎(とつさい)とその弟子たちによる48枚の絵天井で知られる。神社近くの浜に打ち寄せられる砂は、「神の砂」と呼ばれ、家内安全、大漁満足などご利益があると授与される。

「女性なら願い事が一つ叶う」と人気の高いのが鳥羽市相差(おうさつ)の神明(しんめい)神社の石神さん。もともとは地元の海女たちが日々手を合わせた小さな祠(ほこら)だ。海女から現代の女性まで、女神は願いを叶えてくれるようだ。

伊勢には、「龍神伝説」の残る最古の厄除観音がある。内宮からほど近い楠部(くすべ)にある松尾観音寺だ。3月の最初の午(うま)の日には伊勢志摩地方から厄年の男女がお参りする。寺の裏にある二つ池に「龍神伝説」がある。昔、寺が火事に見舞われた時、池から二体の龍神が現れ、本尊の観音像を守ったと伝わる。床の龍神は床を張り替えた後、数年経ち現れたという。

伊勢神宮の別宮も志摩市にある。天照大御神を祀る伊雑宮(いざわのみや)だ。地元では「いぞうぐう」と呼ばれ、神事「磯部の御神田(おみた)」で知られるが、ここも漁師や海女から信仰が篤(あつ)く、授与品の「磯守」を身に付け潜る海女も。たくさんの御利益をいただいたところで、帰路につこう。


  • 1.片田稲荷神社の本殿へ続く道には、赤い鮮やかな鳥居が立ち並ぶ
  • 2.漁師や海女が多い鳥羽市相差。神明神社の石神さんはその参道にある。願い事が一つ叶ったら、お礼参りを。そしてまた新しい願い事をするといいという
  • 3.近年、松尾観音寺の本堂床には龍神が姿を現したと話題になった
  • 4.志摩市磯部町にある伊勢神宮の別宮、伊雑宮。平成26年に遷宮が行なわれ、西の敷地に建つ。毎年6月24日に行なわれる「磯部の御神田」は「三大御田植祭」の一つといわれる

片田稲荷神社

熊野灘に面した堤防のすぐ近くにあり、赤い鳥居が目印。神域には「子安さん」や「穴神さん」などさまざまな祠がある。

交通アクセス
鳥羽駅から車で約1時間

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地図

  • 文:千種清美
  • 写真協力:三重県観光連盟
  • 掲載されているデータは平成29年9月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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