愛媛と高知の雄大な絶景を体感し、ご当地グルメを満喫する四国の旅
予土線は愛媛県(伊予)の北宇和島駅と高知県(土佐)の若井駅を結ぶ路線。沿線の多くは里山と山間部で、広見川や四万十川など絶景車窓が楽しめる。沿線最大の見どころは「日本最後の清流」ともいわれる四万十川。江川崎駅周辺では、レンタサイクルでこの地特有の沈下橋を見て回るのがおすすめ。江川崎駅より東も絶景車窓が楽しめるので、土佐大正駅まで足を運ぶのもよい。最後は宇和島駅周辺の宇和島城やご当地グルメを満喫しよう。「しまんトロッコ」、「鉄道ホビートレイン」、「海洋堂ホビートレイン」の「予土線3兄弟」と呼ばれるユニークな観光列車に乗ることも楽しみのひとつ。
- ※新型コロナウイルス感染症の影響により、列車の運休や変更、施設の営業変更等が発生することがあります。JRニュースや運行会社、および各施設のHP等をご確認ください。
旅の起点となる宇和島駅
四万十川観光の出発駅の一つで、予土線の車両基地もある
宇和島駅は予讃線の発着駅であり、隣の北宇和島駅が予土線の始発駅。宇和島駅構内には、コンビニやコインロッカーがあり、駅ビルにはホテルを併設する。ホテル1階のレストランは早朝から営業しており、ここで朝食をとることもできるので便利。宇和島観光は翌日以降の楽しみに取っておき、絶景が楽しめる予土線の旅に出かけよう。
途中下車駅 松丸駅に到着
温泉施設もある駅は、地域の交流拠点
三角屋根が印象的な松丸駅は滑床(なめとこ)渓谷の最寄り駅。駅舎には町の施設である松野ふれあい交流館が併設され、2階には「森の国ぽっぽ温泉」があり、列車待ちの時間にも入浴できる。
滑床渓谷
滑るように流れる清流とブナやカエデが美しい渓谷
松丸駅を出てすぐの信号を左折するとタクシー会社がある。ここから滑床渓谷散策の拠点となる滑床アウトドアセンターまではタクシーで約30分。滑床渓谷は四万十川の支流、目黒川沿いにあり、総延長約12キロメートルの遊歩道が整備されている。
一帯は足摺宇和海(あしずりうわかい)国立公園に含まれる。花崗岩の河床が特徴で、千畳敷(せんじょうじき)や出合滑(であいなめ)など、岩肌を滑るように流れる清流を見ることができる。
河鹿(かじか)の滝、出合滑などを眺めながら40分ほど歩くと、巨大な一枚岩の斜面を滑り落ちる雪輪(ゆきわ)の滝が現れる。滑床渓谷を代表する景観の一つで、「日本の滝100選」にも選ばれている。
夏の滑床渓谷では、滑らかな花崗岩の岩肌を利用したキャニオニングが楽しみ。滝を滑るスライダースポットが豊富で、なかでも雪輪の滝は日本最大級の40メートルのスライダーポイントになっている。渓流では、アマゴなどが釣れ、キャンプ場もある。時間と体力に余裕があれば、これらのアクティビティを楽しもう。
滑床渓谷
住所 | 愛媛県北宇和郡松野町目黒・宇和島市野川 |
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問い合わせ先 | 0895-42-1116(松野町ふるさと創生課) |
時間 | 見学自由 |
交通アクセス | JR松丸駅から車約30分 |
URL | http://matsuno-kankou.com/%e8%a6%b3%e5%85%89/1156.html |
森の国 ぽっぽ温泉
広見川と森を眺める駅中温泉でほっこり!
松丸駅まで戻ったら、列車が来るまで、駅舎内にある「森の国 ぽっぽ温泉」で汗を流そう。建物前の足湯は無料で利用できるので、列車待ちの時間にひと休みするのもおすすめだ。
浴室は二つあり、男女日替わりで利用できる。「滑床の湯」は滑床渓谷の雪輪の滝をイメージした内湯と露天岩風呂を備えている。
木目が温かい内湯と大樽風呂の露天風呂を備えた「明治(あけはる)の湯」。
泉質は単純温泉(低張性弱アルカリ性冷鉱泉)で、身体に対する刺激が少ない低張性の湯は「肌にやさしい温泉」といわれ、pH8.4の弱アルカリ性なので、美肌効果も期待できる。他にも1時間単位で貸切利用ができる家族風呂があるのもうれしい。売店では、地元、松野町の特産品をはじめ、瓶牛乳やアイスクリームなどが買える。
森の国 ぽっぽ温泉
住所 | 愛媛県北宇和郡松野町大字松丸1661-13 |
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問い合わせ先 | 0895-20-5526 |
時間 | 10時~22時(最終入館21時30分) |
定休日 | 第2月曜(祝日の場合は翌日)、8月は第1月曜 |
交通アクセス | JR松丸駅構内 |
値段 | 520円 |
URL | http://poppoonsen.com/ |
松丸駅から江川崎駅へ
真土(まつち)駅~江川崎駅間はビューポイントのひとつ
真土駅を出ると左側から四万十川の支流となる広見川が寄り添い、列車は蛇行する川に沿うように緩やかなカーブを描いて走る。次の西ヶ方(にしがほう)駅の手前で県境をまたぎ高知県に入り、やがて江川崎駅に到着する。
江川崎駅到着
予土線の旅の1日目のゴール駅
江川崎駅は白くペイントされた木造駅舎。宇和島駅からスタートした予土線の旅の1日目はここがゴール。
江川崎駅構内には、2013年8月12日に国内観測史上最高気温となる41度を記録したことを記す案内板が立っている。江川崎駅周辺の四万十川沿いを中心にホテルや民宿などがあるので、ここで1泊しよう。
四万十市天体観測施設「四万十天文台」
星空の街にある小さな天文台
江川崎駅周辺で宿泊するなら、夜は四万十天文台で星空観察を楽しみたい。ここは1987(昭和62年)に四万十市(旧西土佐村)が旧環境庁の「星空の街」に認定されたことを記念して開設された天文台。
現在はホテル星羅(せいら)四万十が運営する2代目の天体観測ドームとなっている。ドーム内には直径36センチメートルの反射望遠鏡「四万十スター」を備え、肉眼では見ることのできない惑星や天体現象を観測できる。
四万十天文台では、季節の星座や星の案内、反射式望遠鏡「四万十スター」による観察などを行う天体観望会(要予約)を開催している。専門のアテンダントが詳しく解説してくれるので、初心者にも分かりやすい。
夏の夜空を彩るのがはくちょう座(デネブ)、わし座(アルタイル)、こと座(ベガ)の3つの星を結んで描かれる「夏の大三角」。ベガとアルタイルは七夕の伝説に登場する織姫と彦星で、七夕の頃から長期にわたり見ることができる。
四万十市天体観測施設「四万十天文台」
住所 | 高知県四万十市西土佐用井1100 |
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問い合わせ先 | 0880-52-2225(ホテル星羅四万十) |
時間 | 20時~21時(前日までに要予約) |
定休日 | 水曜(臨時休あり、要問い合わせ) |
交通アクセス | JR江川崎駅から徒歩約25分 |
値段 | 520円 |
URL | http://www.shimantostar.com/ |
四万十川りんりんサイクル
豊かな自然に包まれた四万十川沿いを走る
2日目はレンタサイクルを利用して、四万十川の自然を楽しもう。四万十川に架かる西土佐大橋の近くに立つ「四万十・川の駅 カヌー館」はサイクリングをはじめ、カヌーやラフティングなど自然体験プログラムの拠点。レンタサイクルはマウンテンバイクがあり、「四万十・川の駅 カヌー館」のほか、「道の駅よって西土佐」、江川崎駅隣接の「四万十ふるさと案内所」など計9カ所で借りて返却ができる。
四万十川には大規模なダムがなく、コンクリート護岸もないことから「日本最後の清流」といわれる。自然の姿を残す四万十川の景観に趣を添えているのが沈下橋。カヌー館から南へサイクリングで30分ほどの岩間沈下橋は最も有名な沈下橋のひとつ。
沈下橋とは増水時に川の中に沈んでしまうように設計された橋で、増水時に水の抵抗を少なくするために欄干がない。
岩間沈下橋から江川崎駅まではサイクリングで40分ほど。途中に「道の駅 よって西土佐」があるので、ちょっと寄り道するのもいい。
四万十川りんりんサイクル
住所 | 高知県四万十市西土佐用井1111-11 |
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問い合わせ先 | 0880-52-2121(四万十・川の駅 カヌー館) |
時間 | 8時30分~17時(要予約) |
定休日 | 12月31日~1月3日 |
交通アクセス | JR江川崎駅から徒歩約20分 |
値段 | マウンテンバイク1日1500円 |
URL | https://kochi-tabi.jp/search_spot_activity.html?id=1327 |
道の駅 よって西土佐
天然鮎の塩焼きを味わいながらひと休み
「道の駅 よって西土佐」は四万十川沿いにあり、四万十川で捕れた天然鮎を味わえる「鮎市場」や、地元の食材を使用した料理が味わえる「西土佐食堂」、新鮮な朝採れ野菜や特産品が並ぶ「水々しい市場」、地元の季節の素材を使ったケーキが評判の「ストローベイル SANKANYA」などがある。
四万十川といえば鮎漁が有名だ。四万十川の鮎漁は毎年5月中旬に上流が解禁となり、このあたりでは、6月1日に解禁となる。「鮎市場」は四万十川西部漁業協同組合直営で、鮎をはじめ、ウナギやツガニ(モズクガニ)など四万十川で捕れた天然ものがそろう。初夏から秋ごろにかけては店先で焼く鮎の塩焼きが食欲を誘う。
道の駅の2階におよそ3畳分にもなる予土線大ジオラマが展示されている。沈下橋付近で遊ぶ子どもの姿をはじめ、菜の花畑や鯉のぼりなど沿線の風物詩も細かく再現されている。これは予土線ファンやJRの社員たちが協力して製作したもので、模型車両を動かすこともできる。
道の駅 よって西土佐
住所 | 高知県四万十市西土佐江川崎2410−3 |
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問い合わせ先 | 0880-52-1398 |
時間 | 7時30分~18時 |
定休日 | 無休(12月~2月は火曜休、祝日の場合は営業) |
交通アクセス | JR江川崎駅から徒歩約10分 |
URL | https://yotte.jp/ |
2泊以上の旅程で時間があれば、土佐大正駅まで足を運んでみよう!
土佐昭和駅から土佐大正駅は予土線随一のビューポイント
江川崎駅を出るとほどなく四万十川が寄り添い、土佐大正駅までは蛇行する四万十川沿いを何度か鉄橋を渡りながら走る。深い緑に包まれた山間部にあり、トンネルを抜けるたびに四万十川が車窓の右や左に見られる。
なかでも土佐昭和駅から土佐大正駅にかけては絶景区間。土佐昭和駅の東に架かる第4四万十川橋梁付近からの眺めもすばらしい。
土佐大正駅は予土線で行き違いができる駅の一つ。明治時代にこの地にあった村が大正天皇の即位を記念して1914(大正3)年に大正村と改名し、それが土佐大正駅の由来となった。臨時観光列車「しまんトロッコ」も停車する。
土佐大正駅は山小屋風の木造駅舎。周辺には、栗焼酎「ダバダ火振(ひぶり)」の蔵元「無手無冠(むてむか)」をはじめ、旧銀行社屋を利用した酒と焼酎の展示販売店「四万十川焼酎銀行」、約200年前に建てられた山村農家で国重要文化財に指定される「旧竹内家住宅」、鎌倉時代の初めに平家の落人が創建したという「熊野神社」などの見どころがある。「Ekimaehous SAMARU」には原付バイクのレンタルがあるので、これを利用して巡ることもできる。
江川崎駅から宇和島駅へ
予土線を折り返して、清流の町から城下町へ
四万十川の観光を楽しんだら、江川崎駅から宇和島駅に戻ろう。広見川の眺めを楽しむなら進行方向右側の席がおすすめ。宇和島駅までは1時間15分ほどかかるが、サイクリングで疲れた足を休めるにはちょうどよい。
宇和島駅へ到着
予土線の旅の締めくくりは宇和島観光
宇和島駅を出るとヤシの木が立ち並び南国らしい雰囲気がある。駅前には、大正から昭和初期に宇和島鉄道で走っていたドイツ・コッペル社の1号機関車のレプリカが展示され、かたわらに『鉄道唱歌』を作詞した宇和島出身の作詞家・大和田建樹の歌碑が立つ。宇和島随一の観光スポット、宇和島城を目指そう。
宇和島城
藤堂高虎が築いた宇和島城は往時の天守が現存する
城山東北側の登城口、藩老桑折氏武家長屋門。桑折家屋敷地に残されていたものを現位置に移築した。
城山に立つ宇和島城は1601(慶長6)年藤堂高虎(とうどうたかとら)の築城といわれ、上から見ると不等辺五角形をしており、随所に築城の名手といわれた高虎ならではの工夫が見受けられる。
石垣や天守、矢倉は1615(元和元)年に入部した伊達家により修築されたが、基本的な城構えは高虎時代のものを引き継いでいる。城山は国史跡、天守は国の重要文化財に指定されている。
白壁土蔵造りの旧山里倉庫は1845(弘化2)年に三の丸に建てられた武器庫。1966(昭和41)年に伊達家より譲渡され、城山内に移築された。現在は宇和島出身の偉人たちを紹介する城山郷土館となっている。
城山南側の搦手(からめて)道口にある上り立ち門は武家屋敷の正門とされる薬医門形式となっている。現存する薬医門としては国内最大級といわれ、慶長期(1596年~1615年)の創建といわれる。かつては南登城口から天守に至るまでに7つの門があったが、現存するのはこの上り立ち門のみ。
宇和島城
住所 | 愛媛県宇和島市丸之内1-127 |
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問い合わせ先 | 0895-22-2832 |
時間 | 6時~18時30分(11月~2月は6時~17時)、天守・郷土館は9時~17時(11月~2月は9時~16時) |
定休日 | 無休 |
交通アクセス | JR宇和島駅から宇和島バス「本九島」行きまたは「平浦」行き約3分、南予文化会館前下車、または徒歩約25分 |
値段 | 天守は200円(郷土館は無料) |
URL | https://www.city.uwajima.ehime.jp/site/uwajima-jo/ujoushiro.html |
旬膳・郷土膳 和日輔(わびすけ)
ご当地グルメ、宇和島名物の鯛めしを堪能する
宇和島での昼食は「旬膳・郷土膳 和日輔」で名物の宇和島鯛めしを味わおう。玄関前に飾った牛鬼の置物となまこ壁の外観が印象的な店構え。引き戸を開けると小さな噴水があり、清らかな水の音に心が和む。店内随所にオブジェを配し、個室へは池に架けられた橋を渡って行くなど、水をテーマにした演出がされている。
1階にはカウンター、テーブル、小上がり、個室があり、3階には大宴会場もある。カウンターの目の前には滝が流れ、水が落ちる池の中には金魚が泳ぐなど、工夫を凝らした空間も注目だ。
鯛めしは昔、海賊たちが酒盛りの後に、酒を飲んでいたお椀に飯を盛り、鯛をのせて食べたのが始まりという豪快な料理。この店では、卵が入った出汁の中に鯛の切り身を入れ、ご飯の上に鯛と薬味をのせて、出汁で味を調えながら味わう。
「宇和島鯛めし御膳」は店の人気メニューのうちのひとつ。鯛めしの他にご当地グルメの宇和島じゃこ天などが付いてくる。
宇和島じゃこ天は愛媛県沿岸でとれる小魚を皮や骨ごとすり潰し薄く平らにして揚げたもの。鯛めしと共にこちらも食べてみよう。
旬膳・郷土膳 和日輔
住所 | 愛媛県宇和島市恵美須町1-2-6 |
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問い合わせ先 | 0895-24-0028 |
時間 | 11時~15時・17時~22時(日曜、祝日は11時~15時・17時~21時30分) |
定休日 | 無休 |
交通アクセス | JR宇和島駅から徒歩約7分 |
URL | http://www.sk-wabisuke.com/ |
旅のまとめ
予土線は1日の運行本数が少ないうえ、観光スポットも駅から離れたところが多い。そのため1泊2日もしくは2泊3日以上のプランでの旅行がおすすめ。移動の際はタクシーを効果的に利用し、計画的に回ることが重要。江川崎駅より東に進めば、予土線髄一の絶景車窓も楽しめるので、足を運んでみるのもよい。松山駅方面から宇和島駅まで往復する場合は、Sきっぷ(往復券)などお得なきっぷを活用しよう。
地図
- ※写真協力:松野町ふるさと創生課、森の国ぽっぽ温泉、ホテル星羅四万十(四万十天文台)、四万十・川の駅 カヌー館、株式会社西土佐ふるさと市、一般社団法人四万十市観光協会、宇和島市教育委員会文化・スポーツ課、旬膳・郷土膳 和日輔
- ※文:塙 広明(株式会社アド・グリーン)
- ※掲載されているデータは2020年7月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。