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2021.02.12旅行北東北・八戸線 途中下車の旅 ~景色もグルメも海づくし!~

海づくし! 三陸海岸を満喫する

八戸線は、青森県八戸市の八戸駅から岩手県久慈市の久慈駅までの24駅、64.9キロメートルを結ぶローカル線。運転区間のほとんどが三陸復興国立公園と隣接しており、岩礁や砂浜、草原、松林など、美しい海岸線の眺望を楽しめる。沿線最大の見どころはウミネコ飛び交う蕪島(かぶしま)。そのほか、三陸海岸を見渡せる葦毛崎(あしげざき)展望台、波打ち際まで天然芝が敷き詰められた種差(たねさし)天然芝生地、奇岩岩礁が連なる小袖海岸なども必見。海の幸を堪能できる飲食店も多い。1泊2日のプランで、海岸を満喫しよう。

区間のほとんどが、海を臨める絶景スポットだ。晴れの日に乗れるとベスト!

八戸駅からスタート

八戸駅は、八戸線と東北新幹線、青い森鉄道が乗り入れる接続駅。日本最東端の新幹線の駅でもある。バス乗り場も併設されており、市内中心部への運行だけでなく高速バスへの乗降も可能。駅にはみどりの窓口やびゅうプラザ、キオスクなどのほか、駅ビルやホテルなどの施設も備わっている。最初の目的地、八食センターで腹ごしらえをして旅に備えよう。

八食センター

港町・八戸の魚介類が集結! さながら魚介のテーマパーク


全国有数の水揚げ高を誇る港町・八戸に位置する市場。1980(昭和55)年創業で、港近くで鮮魚を販売していた業者が集まって市場を開いたのが始まりだという。


水揚げしたばかりの新鮮な魚介類をはじめ、乾物や珍味、八戸のお土産も売られており、飲食店も含めて約60店舗が軒を連ねる。四季折々の旬が並ぶ姿は圧巻だ。備え付けのテーブルやイスが随所にあるので、買ったものをすぐに食べられるのも魅力的。


センター内の「厨スタジアム」には複数の飲食店がある。そのうちの一つであるいちば亭では、海鮮をふんだんに使用した海鮮丼(写真)のほか、八戸名物のせんべい汁が堪能できる。ほかにもリーズナブルに楽しめる回転寿司・八食市場寿司や、寿司とラーメンが楽しめる勢登鮨が。市場棟にも、八戸ブランドである八戸前沖さばを炭火焼きで食べられる屋久岳など多くの選択肢があり、どこに入るか迷ってしまう。


七厘村では、センター内で購入した魚介類や肉、野菜などを七厘で焼いて食べることができる。利用料は2時間で大人400円、小学生150円。買ったものをその場で食べるのに最適だ。お店のメニューとしてもご飯やおにぎり、せんべい汁、地酒に100%リンゴジュースまで、豊富に取りそろえられている。


八食センター

住所 青森県八戸市河原木神才22-2
問い合わせ先 0178-28-9311
時間 9:00~18:00(施設により異なります)
定休日 水曜(祝日の場合は営業。厨スタジアムは元旦休)
交通アクセス JR八戸駅から100円バスで約12分、八食センター下車すぐ
URL https://www.849net.com/

八戸駅から鮫駅へ

朝食を済ませたら八戸駅を出発して内陸部を走り、東へと向かう。陸奥湊駅に近づくにつれ、車窓の景色は市街地や田園地帯から海へと移り変わり、そして八戸港が見えたら鮫駅はすぐそこだ。なお、八戸駅から鮫駅までのこの路線は「うみねこレール八戸市内線」という愛称が付いている。

途中下車駅 鮫駅

八戸市街の外れにあり、駅からは港を見渡すことができる。駅前には駅名にちなんだ鮫のモニュメントや、鮫駅開業50周年を記念して1974(昭和49)年に設置された、かつて八戸線を走っていた蒸気機関車の動輪も。ここは種差海岸駅まで結ぶワンコインバスうみねこ号の始発駅にもなっている。この駅を起点にウミネコの繁殖地でもある蕪島や葦毛崎展望台、八戸市水産科学館マリエントを巡ろう。

蕪島(かぶしま)

種差海岸の最北端はウミネコの繁殖地


かつては島だったが、埋め立てられて地続きになった。ウミネコの繁殖地としても知られ、3月上旬~8月上旬には数万羽が営巣のため集まってくる。ウミネコの繁殖の様子を間近で観察できるのは国内でここだけ。国の天然記念物に指定されている。


蕪島の頂には、弁財天をまつる蕪嶋神社が鎮座する。社伝によると1706(宝永3)年建立。商売繁盛や漁業安全の願いを込めて信仰を集めてきた。2015年、火災により社殿が全焼したが、全国各地からの寄付金が集まり約5年の歳月をかけて再建された。再建中、ウミネコの繁殖期は工事をしないようにしていたというから、神社とウミネコの繋がりは切っても切れないもののようだ。それを裏付けるように、社殿の形はウミネコが羽ばたいている姿を表しているという。境内には、大正から昭和にかけてに活躍した歌人・柳原白蓮の短歌が刻まれた「ウミネコ供養碑」も。


島名の「蕪」と「株」が同音であることから、株価や人望の「株」が上がることに御利益があるといわれ、「かぶあがりひょうたん御守」が人気。また、ウミネコのフンがつくと「運がつく」という語呂合わせから「会運証明書」がもらえる。


蕪島

住所 青森県八戸市大字鮫町字鮫56-2
問い合わせ先 0178-34-2750(蕪島神社)
時間 散策自由
交通アクセス JR鮫駅から徒歩約15分
URL https://visithachinohe.com/spot/kabushima/

葦毛崎(あしげざき)展望台

ぐるり360度のパノラマが広がる展望台


海岸段丘の北端にある展望台。太平洋の大海原を見渡せるビュースポットであるだけあって、幕末には八戸藩が異国船の監視のために陣屋を置き、太平洋戦争末期には旧日本海軍が軍事施設として使用していたが、現在では展望台として開放されている。古めかしい円形展望台は、まるで西洋の砦のようにも見える。


蕪島から福島県までは、総距離約1000キロメートルの自然歩道「みちのく潮風トレイル」が整備されている。周囲はハマナスの群生地で、初夏には美しい花風景が見られる。それ以外の季節にも折々の花が咲くので、散策にぴったり。


葦毛崎展望台

住所 青森県八戸市鮫町字日蔭沢
問い合わせ先 0178-70-1110(VISITはちのへ)
時間 散策自由
交通アクセス JR鮫駅からワンコインバスうみねこ号で約11分、葦毛崎展望台前から徒歩すぐ
URL https://visithachinohe.com/spot/ashigezaki-tenbodai/

八戸市水産科学館マリエント

八戸の豊かな水産資源を楽しく学べる


全国屈指の水産都市・八戸市による、海の魅力を伝える施設。八戸の象徴ともいえるウミネコや水揚げ量日本一のイカをはじめ、八戸近海の生態系をさまざまな体験を通して学ぶことができる。「ウミネコシアター」では、海の生き物や各種観光情報などの映像が見られる。お土産を買いたければ売店「海風」に行って、種差海岸に関する書籍や絵はがき、八戸グッズを覗いてみよう。


大水槽では、八戸近海に生息する魚たちを観賞できる。ほかにも、マリエントの人気者・アオウミガメが優雅に泳ぐ姿を見られるかも。


カニやヒトデなど、海の生き物たちを実際に触ったり、網ですくったりできるタッチ水槽が子供たちに大人気。


ちきゅう情報館では、国立研究開発法人海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」の研究成果を紹介している。深海の映像や熱水噴出孔のジオラマ、クイズなどで楽しく学習してみよう。


4階に入っているレストラン、名前は「夕日絶景食堂 イヌワラウ」。蕪島や八戸港を一望するオーシャンビューが特徴で、名前の通り絶景の夕日が楽しめる。海の幸を使った料理は和洋中と幅広いラインナップ。


八戸市水産科学館マリエント

住所 青森県八戸市鮫町下松苗場14-33
問い合わせ先 0178-33-7800
時間 9:00~17:00(7~8月は18:00)
定休日 無休(臨時休館あり)
交通アクセス JR鮫駅から徒歩約16分
値段 大人300円、高校生200円、小・中学生100円
URL http://www.marient.org/

鮫駅から種差海岸駅へ

鮫駅まで戻り、再び八戸線へ。左手には海景色が広がる。鮫駅~陸奥白浜駅間は青春18きっぷのポスターに選出されたこともある屈指の車窓スポットだ。見事な海岸線を眺めながら進めば約12分で種差海岸駅。

種差海岸駅周辺で宿泊を

種差海岸駅は小さな無人駅。駅から約2分の海岸通りには八戸市営バスの乗り場がある。周囲には地元産の魚介類料理を食べさせてくれる食事処が点在。今は更地になっているが、種差海岸を名勝にするために奔走した吉田初三郎の邸宅跡もある。
種差海岸駅周辺には、少ないがリーズナブルな民宿がある。八戸港の海の幸を使った料理を食べて、明日に備えよう。

種差天然芝生地

天然の芝生が広がる種差海岸一の景勝地


三陸復興国立公園内の種差海岸を代表する景観。荒々しい岩礁と、波打ち際まで広がる美しい芝生のコントラストが素晴らしく、どこか異国情緒すら感じさせる。これは、この地で古くから馬の放牧が行われていた名残だという。天然芝生を散策したり、ペットと散歩をしたり、寝転んで本を読んだりと、思い思いの時間を過ごすのにベスト。小高い丘の頂には展望台があり、真っ青な海と空、緑の芝生の大パノラマを見ていると、時がたつのを忘れてしまう。


種差海岸にはハマナスをはじめとして、さまざまな花が咲き誇る。特に準絶滅危惧種に指定されているミチノクフクジュソウは貴重で、かつ可憐だ。春を告げる黄色い小さな花を愛でよう。


種差天然芝生地周辺には見どころが点在。砂浜が約2.3キロメートル続く大須賀海岸は、踏みしめるとキュッと音がする「鳴砂」で知られる。樹齢100年近いという松林が広がる淀の松原など、みちのく潮風トレイルを楽しんでほしい。


種差海岸インフォメーションセンターは種差天然芝生地前にあり、三陸復興国立公園の種差海岸エリア、みちのく潮風トレイルについて、四季折々の情報を得ることが可能。自然や人と触れ合える体験プログラムも充実している。


種差天然芝生地

住所 青森県八戸市大字鮫町字棚久保
問い合わせ先 0178-70-1110(VISITはちのへ)
時間 散策自由
交通アクセス JR種差海岸駅から徒歩約3分
URL https://visithachinohe.com/stories/tennenshiba-area/

種差海岸駅から終点の久慈駅へ

種差天然芝生地の美しさを堪能したら、駅まで戻って八戸線終点の久慈駅を目指そう。海岸線を走っていると、空と海の青・砂浜の白・木々の緑の合間に奇岩や岩礁が見え隠れする。時折、松の防風林に囲まれながら進む。階上(はしかみ)駅を越えると岩手県に突入。宿戸(しゅくのへ)駅~陸中中野駅間は特に海との距離が近いため、三陸海岸の絶景を楽しむのに最適な区間だ。
陸中中野駅を出て南西に進路を取ると、八戸線は山岳路線へと変貌する。陸中夏井駅を過ぎたあたりで田園風景の中に住宅地が見えるようになり、終点の久慈駅へと到着する。

八戸線の終点、久慈駅に到着

久慈駅は久慈市の中心地にある、八戸線および三陸鉄道リアス線の終着駅だ。駅構内にはみどりの窓口やコインロッカーといった一般的な設備のほかに、久慈市観光案内所などがある。周辺には久慈市役所をはじめとした公共機関があり、ホテルやスーパー、道の駅などがある。2013年NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台だったこの地には、ドラマの小道具を展示する施設や撮影場所などをめぐる、いわゆる「聖地巡礼」に臨む人が今でも多い。三陸鉄道リアス線久慈駅にある三陸リアス亭や、車で約10分の小袖海岸も『あまちゃん』ゆかりの地だ。

三陸リアス亭

特産のウニを使った売り切れ必至の駅弁


三陸鉄道リアス線久慈駅にあるそば・うどんの立ち食いの店。女将はNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の登場人物のモデルになった人でもある。「三陸鉄道の名物を」という思いから駅弁を手がけるようになったそうだ。


地元の特産グルメであるウニを手頃な値段で食べられるので、連日多くの人たちが来店する。名物のうに弁当1570円は1日限定20食(予約を除く)。昼前に売り切れてしまうこともあるので、「幻の駅弁」ともいわれている。蓋を開けると磯の香りが漂い、黄色に光るように蒸したウニがぎっしりと入っている。ウニの煮汁で炊き込んだご飯も秀逸で、一緒に口に入れればまさに最高の気分。


三陸リアス亭

住所 岩手県久慈市中央3-38-2 三陸鉄道久慈駅舎内
問い合わせ先 0194-52-7310
時間 7:00~16:30
定休日 不定休
交通アクセス JR久慈駅から徒歩約2分
URL https://sanriku-travel.jp/archive/contents-1769

小袖海岸

インパクト抜群の奇岩や岩礁が点在する海岸線


久慈湾南東部に位置する景勝地で、三陸復興国立公園および久慈平庭県立自然公園に指定されている。入り組んだ海岸に沿った道からは、海と山のダイナミズムを実感できるだろう。釣り鐘状の岩があったと伝わるつりがね洞をはじめ、海岸線にはさまざまな奇岩、岩礁が見られる。
『あまちゃん』でも知られるとおりここは海女漁の北限で、小袖漁港には白い灯台や監視小屋、小袖海女センターの海女の実演場といった、ドラマの中に入ったような景色を見ることができる。


浄土ヶ浜の手前にある兜岩(かぶといわ)。先端がとがっていて武将の兜の飾りのように見えることから名が付いたという。


中央に見えるしめ縄で結ばれた2つの岩が夫婦岩。右側が女岩で、左側の男岩の頂には赤磯大明神がまつられている。津波の際にもしめ縄が切れなかったことから、夫婦の絆を強めたり、縁を強く結びつけるご利益があるとされている。


小袖海岸

住所 岩手県久慈市長内町
問い合わせ先 0194-52-2123(久慈市観光交流課)
時間 散策自由
交通アクセス JR久慈駅から岩手県北バス久慈海岸線で約30分、浄土ヶ浜下車約40分、小袖海岸下車など
URL https://www.kuji-kankou.com/kosode

旅のまとめ

種差海岸や小袖海岸といった名勝に沿って走行する八戸線は、車窓の景色が抜群に美しい。晴れの日に乗ることができれば、海と空とが溶け合った、青そのもののような景色を堪能することができる(もちろん雨や曇りの日に見る海も、それはそれで趣があるのだが)。八戸港や駅弁で海の幸も満喫できればもう言うことはない。ただし、鮫駅~久慈駅の区間では本数が少ないので、時間に注意が必要。

  • 写真協力:八食センター、青森観光サイト アプティネット、八戸市水産科学館マリエント、久慈市観光交流課
  • 文:速志 淳(株式会社アド・グリーン)
  • 掲載されているデータは2021年2月現在のものです。変更となる場合がありますので、お出かけの際には事前にご確認ください。
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