トレたび JRグループ協力

2019.10.18旅行列車旅なら飲まなきゃ損! 日本全国酒蔵めぐり 青森編

青森の酒蔵を訪ねる列車旅

電車にゆらゆら揺られて出かける旅なら、のんびりとお酒を飲むことができます。目的地までの新幹線車内でちょっと一杯――というのも大人の休日ならではの過ごし方。近年大人も楽しめる社会科見学として人気を集めているのが、日本酒の酒蔵めぐりです。今回は青森県を訪れます。その土地の風土を知って味わうと、あら不思議。今までより美味しさが増すから、お酒って面白いものです。

3つの海に囲まれた資源豊かな「青い森」青森県


青森

本州の最北端に位置する青森県。面積の約67パーセントを森林が占めており、十和田湖をはじめ八甲田山、岩木山、世界遺産白神山地のブナ原生林など養水や雪解氷、雪解け水が豊富。さらに澄み切った空気と厳しい寒さが特徴で、日本酒づくりには最適の場所です。また収穫量全国一位のりんごやニンニクなどの農産物だけでなく、日本海、太平洋、津軽海峡と3つの海に面していて、サバ、イカをはじめとした数多くの水産資源にも一年を通して恵まれているため、酒の肴にも事欠きません。 かつての藩政の関係で、津軽地方と南部地方という2つの文化圏が存在します。今回ご紹介する「八戸市」は南部地方最大の街です。国内有数の水揚げ高を誇る八戸漁港があり、夏には八戸三社大祭という大きなお祭りが開催されます。本八戸駅付近の繁華街は多くの飲み屋がひしめき合い、なかでも「みろく横丁」は地元住民にも観光客にも愛される屋台街で、老若男女が日本酒をはじめとしたさまざまなお酒を楽しんでいます。

八戸酒造

悲願の先に兄弟が確立した「陸奥八仙」ブランド


八戸酒造1

初代が麹屋として事業をスタートしたのち、4代目が湊浜通りで酒造店を開業しましたが1944(昭和19)年、太平洋戦争下における企業整備令によって管内の酒蔵16軒が統合を強いられ、「八戸酒類」の第三工場となりました。戦後も長くそのままでしたが、現在の社長で8代目・駒井庄三郎さんが一念発起し、1998年「八戸酒造」の独立を果たし、陸奥八仙ブランドを立ち上げました。その後長男・9代目秀介(ひでゆき)さんが営業を担い、次男の伸介(のぶゆき)さんが製造責任者を務め、体制を確立。さらに地酒専門店のアドバイスを受けるなどして酒質を向上させて、人気銘柄へと急伸したのです。

●主な銘柄:陸奥八仙、陸奥男山
●創業:1775(安永4)年


八戸酒造2

港へと続く新井田川に接した、土蔵造りの建物だけでも一見の価値があります。違う年代に建てられた蔵が同じ敷地内にこれだけの棟数揃って残されているのは民間企業としては珍しく、国の登録有形文化財に認められ、さらに木造蔵3棟、主屋1棟、レンガ蔵1棟、れんが塀は青森県で初めての景観重要建造物指定を受けています。内装リフォームされたレンガ蔵はコンサートや講演会場として地域振興の一端を担っています。入り口を入ってすぐの売店兼テイスティングルームにはお酒以外にも、手ぬぐいやバスボム、お猪口などのグッズがあり「スタイリッシュでかわいい」と旅の思い出としても人気です。


八戸酒造3

八戸酒造は全量青森県産のお米と青森県酵母を使って、酒づくりをしています。「陸奥男山」は、全国に数ある「男山」とつくお酒に先駆けて、1910(明治43)年に商標登録している昔ながらの銘柄です。「辛口酒」として有名で、地元の漁師さんたちからも愛されています。


八戸酒造4

一方「陸奥八仙」は1998年に生み出された銘柄。当時は地元向けとしてのリリースでしたが、やがて「陸奥男山」に取って代わり、現在では青森県外の市場に向けた蔵の顔となっています。華やかでさわやかな吟醸香と、はじけるようなフレッシュさ、そしてハッキリとした甘みと旨味が特徴のお酒です。ロンドンで毎年開催される「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2016」のSAKE部門にてトロフィーを獲得したのは、青森県では「陸奥八仙」が初めて。2019年に開催されたフランスの「Kura Master」では純米酒部門、純米大吟醸部門、スパークリング Standard 部門においてなんと5アイテムが受賞を飾り、その実力を改めて世に知らしめました。


八戸酒造5

(左から)「陸奥八仙 特別純米」。最も華やかな「陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸」。「“蔵限定”陸奥八仙 純米大吟醸」はここでしか買えない特別な逸品! 「陸奥八仙 赤ラベル特別純米」。八戸秋の風物詩であるイカ釣り漁船の漁火をイメージしたラベルと、イカに合うような辛口の味わいが特徴の「陸奥八仙 いさり火 ラベル特別純米」。これらは売店ですべて購入することができます。駒井兄弟を中心とした八戸酒造は、歴史ある蔵で伝統を守りながら、先代の想いを受け継ぎ、未来に向けて新たなる一歩を踏み出したばかり。ぜひ酒蔵に足を運び、その歴史の厚みを肌で感じてみてください。


八戸酒造

住所 青森県八戸市大字湊町字本町9
問い合わせ先 0178-33-1171
時間 酒蔵見学※要予約 月~金曜日、10:00〜16:00(所要時間1時間程度)、売店・テイスティングバー 10:00~16:00
値段 見学は無料、試飲される方は500円(税込)
URL https://www.mutsu8000.com/

みなと食堂

この一杯を食べるためだけでも八戸に行きたい! 絶品「平目の漬け丼」


みなと食堂1

八戸酒造からほど近い、陸奥湊駅より徒歩3分ほどの場所に「みなと食堂」はあります。隣にあった魚屋で働いていた守正三さんが、食堂の閉店をキッカケに2004年にオープンさせた海鮮丼のお店は、口コミだけで広がったにも関わらず、週末になると行列が絶えることない人気店です。


みなと食堂2

「味とボリュームにこだわっています。赤身は数日寝かせ、白身魚はできるだけスグ出します。それぞれに適した下処理をして、熟成度を見極めて、“今だ!”っていう一番良いタイミングで提供しています。」と守さんは笑顔で話します。美味しさのあまり1人で2、3杯注文するツワモノもいるとか?!


みなと食堂3

一番人気は「平目漬け丼せんべい汁セット(1350円)」ですが、ここに旬の刺身をトッピングしていくのがみなと食堂通の流儀だとか。春は北寄、上りカツオ。夏はほや、うに。秋はサバ、下りカツオ。冬はあわび、サバ…と旬の魚が変わるので、違う季節に再訪したくなること間違いなし。もちろん「陸奥男山」「陸奥八仙」も飲めます。


みなと食堂

住所 青森県八戸市湊町字久保45-1
問い合わせ先 0178-35-2295
時間 6:00~15:00(L.O.14:30)
定休日 毎週日曜日
値段 予算 1500~2500円

八戸酒類

八戸に「八鶴」在り!経済発展の立役者


八戸酒類1

本八戸駅から徒歩15分ほど、八戸の繁華街ど真ん中にある酒蔵です。もともと呉服商だった初代橋本八右衛門(はちえもん)が、酒屋を買いとって酒造りを始め、代々「八右衛門」を襲名して継ぎ、現在の社長で9代目を数えます。1911(明治44)年「八戸発展のために必要」と諸外国にならい発電所を造り送電を開始したり、電話開通に尽力したり、八戸製氷を創設するなど八戸の経済発展を語るのに欠かすことのできない橋本家の中心事業が、日本酒の製造であり、そこでつくられているのが「八鶴」です。

●主な銘柄:八鶴、はちつる、一酔百招福、蔵物語
●創業:1786(天明6)年


八戸酒類2

味わいの良さに、八戸を大きく発展させた功績も相まって、地元の酒飲みから絶大な支持を受けてきた「八鶴」。企業整備令で地域の酒蔵が統合された際にも、中心を担いました。現在八戸酒類は、少し離れた五戸町の別工場で「如空」という酒もつくっています。


八戸酒類3

かつて酒蔵は農業や漁業従事者の冬場の出稼ぎによって支えられてきました。しかし時代は移り変わり、次第に社員化やオーナーが製造責任者を担うケースが増えます。八戸酒類でも2015年、社員による製造体制に切り替えられ、若手によって伝統を引き継ぎ、さらに時代に即した酒づくりがおこなわれています。事前予約すれば製造現場の一部を見学することができます。


八戸酒類4

「八鶴」は「きょうかい10号酵母」の発祥蔵とも言われており、「きょうかい1801酵母」とともに多くの商品で使用しているので、両者の特徴である華やかで香り高い吟醸香が持ち味です。「うちの井戸水はやや硬めの軟水なので、水が持つ力が強いんです。水を活かしたスッキリ辛口系のお酒が多くなっています。」と杜氏歴5年目の加藤貴大さんは言います。前任の4人の腕利き杜氏のもとで修業したこともあり、これからが楽しみな若手杜氏のひとりです。蔵見学の一部を担当しているので、加藤杜氏直々に説明してもらえるラッキーな人も。


八戸酒類5

(左から)蔵元直売所限定品「純米吟醸 生貯蔵酒」は地元の「華想い」という酒米を55パーセント精米したトライアル商品。直売所限定品は時期によって商品が異なるので行ってみてからのお楽しみです。もっとも「きょうかい10号酵母」らしさが味わえる「純米酒」は青森県産「華吹雪」使用。「純米大吟醸 華想い」。「純米吟醸無ろ過生はちつる」はしっかりとした味わいでジューシーな一本。ボトルや樽に使われている「八鶴」という文字は、6代目がお願いして書いてもらった横山大観の書。


八戸酒類株式会社

住所 青森県八戸市大字八日町1
問い合わせ先 0178-43-0010
時間 9:00~16:00 (酒蔵見学は完全予約制、3日前までに事前予約が必要)
定休日 年末年始
URL https://hachinohe-syurui.com/

ほこるや

絶品「青森シャモロック」を食べるならここ!


ほこるや1

1924(大正13)年に起きた“八戸大火”以降に、絶望に包まれていた八戸を活気づけるため建てられた「八鶴」を醸す八戸酒類の前身である「河内屋橋本合名会社」の事務所。建物は現在、飲食店として活用されており、ここで営業するのが「ほこるや」です。


ほこるや2

八戸市の町並みに大きく寄与していると「第1回(昭和62年度)八戸市景観賞」を受賞しており、また登録有形文化財にも登録されています。1階正面のショーウィンドウや欄間のステンドグラスなど、ほとんどが当時のままで、どこもかしこもモダンで印象的なこの建物で食事していると、タイムスリップしたような心地になります。


ほこるや3

青森郷土料理を味わうことのできる、数少ない料理店のうちの一軒です。ブランド地鶏「青森シャモロック」、青森の最高級和牛「倉石牛」や「十和田産馬肉」や青森銘肉、山里の恵み、新鮮な海の幸など八戸を訪れたらぜひ食べておきたいものばかり。「シャモロック鍋」は、大きく切られた肉の旨みやむちむちとした弾力ある食感、ふっくらしたつくね、濃厚なガラスープがしみ込んだ野菜が絶品です。「青森シャモロック」出汁の舌触りはサラリとしているものの、奥に何層にも重なる旨味が感じられ、滋味に富んだごちそう。身体に染み渡ります。


ほこるや

住所 青森県八戸市大字八日町6−1
問い合わせ先 0178-73-1270
時間 ランチ/11:30~14:30(L.O.14:00)、 ディナー(夜の部)/17:00~22:00(L.O.21:30、ドリンクL.O.21:30)
定休日 日曜日
値段 予算 4000~5000円
URL https://r.gnavi.co.jp/t310200/

山や野に三方の海の幸も加わり、一年を通しておいしい味覚に恵まれた青森県。一度行くとやみつきになり、また絶対に訪れてしまいたくなる魅力を持ち合わせています。次のお休みには、ぜひ青森旅行を計画してみてくださいね!

この列車で行こう


E5系

【東北新幹線E5系はやぶさ】
運行区間:東京駅~新青森駅

2011年3月5日に当時の最高速度300km/hで運転を開始した新世代の新幹線。車両全体のサービス設備も含めて誰にでも快適な空間が提供されています。


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リゾートうみねこ

【リゾートうみねこ】
運行区間:八戸線・八戸駅~久慈駅間
八戸線沿線の車窓に広がる海を最大限に楽しめるよう、ワイドガラス仕様の車両も。45度回転する1人掛けシートや展望チェアもあります。


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著者紹介

関友美

きき酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
「とっておきの1本をみつける感動を多くの人に」という想いのもと記事を執筆、セミナーでの講演や酒蔵での酒づくりなど、日本酒のあるさまざまな場所に出没しながら、あらゆる手段で日本酒の美味しさと日本文化の豊かさを伝えている。

オフィシャルHP
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  • 写真/関友美、八戸酒造、ほこるや
  • 掲載されているデータは2019年9月現在のものです。
  • 運転区間等は変更となる場合があります。
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