トレたび JRグループ協力

2021.09.28旅行道後温泉で明治に思いを馳せ、「伊予灘ものがたり 大洲編」を堪能する愛媛の旅

伊予の国が誇る、温泉、絶景、歴史を楽しむ豪華フルコース

10月1日から12月末日まで、四国デスティネーションキャンペーンという大型観光キャンペーンが実施されています。
デスティネーション→目的地ってことだから、もちろん四国に行ってねってことです。
で、今回紹介の目的地は愛媛県。
温泉に満足いくまで浸かり、観光列車から絶景を眺め、歴史ある街並みが残る城下町を散策します。
ところで愛媛県、どこにあるか、わかっています…よね⁈
愛媛県は、太平洋に面した土佐の国・高知県の北西側、ほぼ瀬戸内海に面している伊予の国です。
ほか、北東側が讃岐の国・香川、東側が阿波の国・徳島。これで四つの国があるから四国といわれるようになりました。

  • トップの写真は、下灘駅に停車する「伊予灘ものがたり」

愛媛県といえば、なに?


堂々たる道後温泉本館(現在は保存修理中のため外観が異なることがあります)

はい、では愛媛といえば?…みかん。これからは温州みかんが旬を迎えます。
現地で食べるみかんもこれまたうまいです。なだらかーな山々とおだやかーな瀬戸内の風土を感じながら食せば、じんわりと広がる甘みが生まれたのも必然、と思われるでしょう。

では観光地なら?…そう温泉の雄、道後温泉!
日本最古級の湯治場で、3,000年もの歴史があるといわれています。100年以上前に夏目漱石『坊っちゃん』でも描かれていますが、その歴史からするとつい最近の話ですね。

ぴかぴかの道後温泉本館で浸かっていた夏目漱石

道後温泉がある松山市は城下町。道後温泉の町も「道後温泉本館」を城とした城下町のようで、ここを中心に約30軒もの温泉宿があります。
JR松山駅から約25分、かわいい路面電車に揺られて着く道後温泉電停は、明治時代の洋風建築を復元した、これまたかわいらしい駅舎です。下車したら振り返って見ましょう。
ここから、にぎやかな道後商店街に並ぶご当地自慢のおいしいあれこれや、おみやげものをきょろきょろ見回し、「あとであそこチェック」などとつぶやきながら、はやる気持ちで抜け出ると、目の前に主役感満点の道後温泉本館。威風堂々どーんと構えています。

現在の建物の竣工は1894年、日清戦争のあった年です。
松山出身の秋山兄弟が大活躍する、司馬遼太郎『坂の上の雲』でも描かれた日露戦争はその10年後。
夏目漱石が松山中学に教師として赴任したのは1895年。その頃の道後温泉本館はできたてぴかぴかの大型観光スポット?だったわけですね。
漱石は知人に宛てた手紙のなかで「道後温泉はよほど立派なる建物にて~(中略)~随分結構に御座候」と記しています。

保存修理中だけど営業中の文化財?

今年築126年にもなり現在は保存修理中ですが、一部の湯で入浴可。
国の重要文化財が営業しながら保存修理しているという姿は、いましか見られません。
漱石が友人の正岡子規や高浜虚子とうきうきして湯に入り髭を湿らせたであろう日に思いを馳せ、歴史ある温泉でうきうきするのも一興です。

デジタルが生み出す、未来の情緒


露天風呂もある「飛鳥乃湯泉」

ちなみに、道後温泉の外湯は本館のみではありません。
4年前のオープンした「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」には露天風呂もあり、たいへんおすすめです。
屋内は和紙・布・木々など使った細工を活かした、すっきり清々しいデザイン。
大浴場では、砥部焼の陶板壁画に映し出されるプロジェクションマッピングをぜひ。
浴場の壁画が動き、デジタルが生み出す情緒は、未来の入浴体験を感じさせることでしょう。

  • 2021年9月28日現在、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、道後温泉本館、飛鳥乃湯泉は臨時休館中です。

数ある観光列車のなかで一番? 「伊予灘ものがたり」に乗車


「伊予灘ものがたり」のゆったりとした車内

道後温泉の湯がたっぷりからだにしみ込んだ翌朝。朝風呂でもういっちょしみ込ませたら、向かうは松山駅。
四国→観光→トレたびと来れば、はい、観光列車。「伊予灘ものがたり」に乗り込みます。

ここでおそれながら私情を述べると、この乗車は長らくの夢でした。
いまや日本各地で走る観光列車ですが、当社発行の月刊『鉄道ダイヤ情報』の前編集長に以前、「数ある乗車体験のなかで一番好きな観光列車は?」と問うたところ、その答えは「伊予灘ものがたり」。
期待せずにはいられません。先に結論から申し上げますと、期待以上でした。
では「なにが期待以上だったのか」は以下になります。以上だったり以下だったりで、すみません。

風景、味、雰囲気、サービス…すべてにうっとり…


車窓に広がる伊予灘

からだにいい!も感じさせる食事(メニューは時期により変更します・イメージ)

乗車した観光列車は「伊予灘ものがたり 大洲編」。松山駅から西へ、伊予大洲駅に向かいます。
列車が走りだし、乗り込んだ気持ちが落ち着く間もなく、車窓に青々とした瀬戸内海が広がります。
朝の光にきらめく、この海こそが瀬戸内海南西部の海域、伊予灘。乗客の誰もがはっとして表情を変える瞬間です。
瀬戸内ならではのおだやかな海の遠くには、島影がちらほら。
ゆっくりと過ぎ行く眺めに時間を忘れそうになりますが、ゆったりとしたラウンジのような車内でいただく食事も大きなお楽しみ。
アテンダントさんは、ホテルのような丁寧さもありつつ地元のあったか感もある、極上の笑顔で、モーニングプレートを配っていきます。
メニューは地元自慢の食材を使い、素材のどれもが味わい深く、たとえば野菜にしても味付けいらずと思える鮮度で、それぞれがしっかり味の主張をしていて、口中に滋味の広がりを感じます。
うっとりしすぎて目を閉じそうになりますが、車窓の絶景を見逃すわけにもいかず、目をぱっちり開けてうっとりします。

後半、川沿いの車窓もなかなかのもの

「伊予灘ものがたり」は、とかく海の絶景を語られがちなのですが、海から内陸に向かう後半、肱川(ひじかわ)に沿って走る車窓もなかなかの情景です。
田園のなかをきらきら光り流れる川面と、その向こうでなだらかな稜線を描く山々。
このしっとり感もまたこの列車の「ものがたり」の後半にふさわしいものだと感じられるでしょう。

江戸・明治期の建物が残る城下町・大洲


江戸期の建物が並ぶ「おはなはん通り」

そうして「伊予灘ものがたり」は肱川の流れをさかのぼるようにして、城下町・大洲へ到着。
江戸や明治期の建物が残り、古めかしい城下町風情の街並みを感じさせるのは肱川の左岸側。
なかでも「おはなはん通り」と呼ばれる通りには白漆喰の壁が美しい江戸時代の建物が並んでいます。
石畳の道の片側を流れる水路では鯉が泳ぎ、水路のところどころで竹細工に花が添えられているなど、町の人が大事にしていることがわかります。
通りの名は、NHK朝のテレビドラマ『おはなはん』(1966年)のロケ地で使われたことから。
同じくロケ地といえば町内には『東京ラブストーリー』で主人公リカがカンチに別れの手紙を出した赤いポストが残っています。
それもまたもう30年もむかしのドラマですが…。いまだにここできゅんきゅんしちゃう人も多いという話です。

伝統の美と技術が結集した典雅な邸宅「臥龍山荘」


臥龍山荘の母屋となる臥龍院

紅葉も美しい山荘の庭

さて、そんないろいろな時代のレトロをもりもり残す町ですが、なんとしても行くべき場所は「臥龍山荘(がりゅうさんそう)」。
大きくうねる肱川に抱かれた、小高い丘の上にある邸宅です。
パンフレットのキャッチに「日本建築の粋と卓越した美学」とあるとおりで、邸内各所に超一級の技術とセンスが注ぎ込まれています。
月を表現した丸窓、こうもりをかたどった襖の引き手、障子に映る繊細な透かし彫り…。
もともと歴代藩主の別荘といったところでしたが、大洲出身の明治の貿易商・河内寅次郎なる人がこの地を気に入り、豪奢な屋敷に仕立て上げました。母屋となる臥龍院が建てられたのは1901年。
日本がそれまでに育んできた技の数々が星団のように集まって輝く、伝統美と技術の小宇宙といっていい空間です。
肱川を望む敷地の先に立つ庵の天井は、竹網代張りの曲線天井になっていて、川面に光る月光のさざなみを天井に映すという凝りよう。まさに興趣極まれり。
建築にあまり興味のない人でも、見れば見るほどその技術が醸し出す粋に息をのむはずです。


曲線を描く竹網代の天井に肱川の光が映る

伊予の国で待っています

愛媛県は、みかんに道後温泉に…という鉄板もあれば、臥龍山荘のようないぶし銀の大人を感動させるスポットも擁しています。
伊予の国は奥深く、きっとまだまだ多くのすてきスポットが発見されることを待っているでしょう。

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