トレたび JRグループ協力

2020.05.11旅行JR西日本が手掛けるSEA SPICA(シースピカ)、その魅力とは

この夏、瀬戸内に新しい旅のカタチと観光型高速クルーザーが登場!

青い空、青い海、そしてどこまでも続くようなしまなみ。ゆったりとした瀬戸内海の光景は訪れる全ての人を魅了する。海に浮かぶ島々は「しまなみ海道」に代表されるとおり、橋によってつながっている島も少なくないが、それでもまだまだ地域に密着した乗り物として「船」の存在感が大きい。
そんな「船」に2020年夏、まったく新しいコンセプトのクルーザーがデビューする。

うららかな瀬戸内をめぐる、新しい旅の選択肢とは?

比較的晴天の日が多く、また海上の波も穏やかな瀬戸内海。大小いくつもの島々が並ぶこの地域にはちょうど路線バスのような感覚で、渡船やフェリーといった海上交通機関が多く往来している。またJRの駅から徒歩圏内で行ける港も多く、中には新幹線の駅から歩いていける港もある。「海がある生活」が身近なこの地域を観光するなら、ぜひフェリーなどの海上交通を旅程に入れ込みたい。

しかし、この地域の船は経由地などが細かく設定されていたり、複雑なルートを通るものも多くて、土地勘や事前のリサーチをしっかりと行わないとやや迷ってしまう一面も。とはいえども、海を行く旅路は鉄道などとはまた一味異なり、一気に「たび感」を高めてくれる存在だ。そこで、注目したいのがこの夏、誕生する瀬戸内しまたびライン「SEA SPICA」(シースピカ)だ。


SEA SPICAイメージ これがSEA SPICA!(画像提供:JR西日本 画像はイメージです)

現在、JR西日本では瀬戸内エリアの新しい魅力を発掘、探究していく「せとうちパレットプロジェクト」が進行中! 鉄道車両や駅だけでなく、船、宿、サイクリング、食などあらゆる瀬戸内の魅力を伝えている。

シースピカはこれまでのフェリーとは一線を画すコンセプトを掲げ、観光型高速クルーザーとして現在、今年の夏の就航を目指して絶賛造船中。これまでの「生活路線」としての船ではなく、観光利用に特化し、高速で安定性に優れたクルーザーとなっている。
運行ダイヤもユニークで、現在の予定では広島港(宇品)を出港後、海自と造船の町である「呉」、朝鮮通信使来日の際に藩の玄関口として大歓迎した「下蒲刈島」に立ち寄ったのち、900羽以上のうさぎが住む『うさぎ島』の愛称で親しまれている「大久野島」に立ち寄り、国産レモン発祥の地、「瀬戸田」を経由して「三原」へ。その後折り返し便は、「瀬戸田」を経由し、東行き便と同じく「大久野島」に立ち寄った後に、今度は東行き便では立ち寄らなかった、江戸時代の面影を残す凪待ち、潮待ちの港町、大崎下島の「御手洗」に立ち寄り、「呉」、「広島」と戻るルートが計画されている。


シースピカ 予定航路 シースピカの予定航路 緑が東行き便、ピンクが西行き便だ(画像提供:JR西日本)

さらに各立ち寄り港では地元の方のお出迎えや特産品の販売、レンタサイクルの貸し出しなども行われる予定で、シースピカに乗船すれば瀬戸内の魅力を一度にたくさん楽しめちゃうのも魅力だ。港によっては停泊時間を長めに設定し、軽い散策を楽しんだのち再び同じ便に乗るといったようなダイヤが検討されており、加えて、大久野島で一旦下船して長時間の滞在を楽しんだ後に竹原港行の定期船に乗り継ぐことや、東行きの便で瀬戸田港で下船し生口島で食事をとってから今度は西行きの便に乗船する、あるいは、東行きの便に乗船後、三原港からほど近い三原駅から列車に乗り継ぐといった、いくつかのパターンの旅程が組めるようにも配慮されている。まさにクルーズ船のような旅のスタイルを瀬戸内で楽しめる新しいコンセプトだ。


大久野島 うさぎ 立ち寄り地の一つ、大久野島には人懐っこいうさぎがお出迎え!


瀬戸田 街並み のんびりとした瀬戸田の街並み


瀬戸田 レモン 瀬戸田を歩けば至るところで地元産のレモンが販売されている

造船中のSEA SPICA、気になる設備は…

現在、シースピカは尾道にある造船所、「瀬戸内クラフト」にて造船中。瀬戸内クラフトは、軽量化にメリットのあるアルミを使用した造船が主流で、シースピカもアルミ製の高速クルーザーとなっている。


瀬戸内クラフト シースピカ 「瀬戸内クラフト」で造船中のシースピカ。船体はアルミ製


シースピカ 客室部分 客室部分は別室で製造され、あとで搭載される


シースピカ 操縦席部分 操縦席部分も別々に製造される

さて、そんなシースピカ。ユニークなのは航行ルートだけでなく、船そのものもこだわりのデザインが施される。2F、1Fの2フロアから構成される広々とした船内は、まさに観光型クルーザーにふさわしい佇まい。メインの客室となる1Fの座席は従来の高速船のようなシートではなく、どこかラウンジのような特注のソファ型座席を採用。窓側の座席は若干外側に傾けられて眺望性を持たせているほか、大型テーブルなども設置される予定だ。

2Fはデッキ「スピカテラス」となっており、瀬戸内の風を肌で感じることのできるデッキになっている。バリアフリー対応で1Fから車いすのまま上がることもできる。


シースピカ 1F客室 1Fの客席スペース(画像提供:JR西日本 画像はイメージです)


シースピカ シート いくつかのシートタイプがあり、各々の過ごし方で楽しめる (画像提供:JR西日本 画像はイメージです)


シースピカ 2Fスピカテラス 2Fのスピカテラス。潮風が心地良さそう! (画像提供:JR西日本 画像はイメージです)


デザインを担当する川西康之さんにインタビュー!

このシースピカのデザインを担当しているのは、株式会社イチバンセン代表の川西康之さん。これまで「えちごトキめき鉄道リゾート雪月花」や「肥薩おれんじ鉄道」のデザインを担当し、最近ではJR西日本「WEST EXPRESS銀河」のデザインも担当した。今回、川西さん自身初となる船のデザイン。鉄道と船の様々な違いを川西さんに尋ねてみた。


川西康弘 シースピカのデザインを担当している川西康之さん(WEST EXPRESS銀河の車内にて)

「一般的に船のデザインは昨今の大型クルーズ船に代表されるようにまるで高層ホテルのようで、建築に近い発想です。建築の常識をいかに海上で実現するかがポイントです。一方で『シースピカ』は高速船のため、部品一つ一つの軽量化が求められました。そのため、建築、というよりは飛行機や新幹線車輌に近い発想が必要でした。また求められる難燃・不燃性能は鉄道以上に船は厳しいですし、あらゆる部品が常に塩分にさらされるため、素材や部品の選択肢が限られました。ここが、デザイン設計では一番厳しかった箇所です」


WEST EXPRESS銀河 外観


WEST EXPRESS銀河 車内 川西さんがデザイン担当したJR西日本「WEST EXPRESS銀河」

川西さんが手掛けた鉄道車両は、車内で様々な過ごし方ができる「WEST EXPRESS銀河」にもみられるように楽しいサインや仕掛けが随所に散りばめられている。このシースピカも例外ではなく、

「『WEST EXPRESS銀河』の車内サイン、グラフィックには車内におけるお客さまの回遊性を高める目的がありました。長距離ご乗車いただく列車ですので様々な視点や景色をお楽しみにいただけるようにとの工夫です。『銀河』に比べれば、『シースピカ』はコンパクトですが回遊性が快適性に直結するのは同じですので、楽しい居場所となる2Fの『スピカテラス』をご用意しました。また、ご家族向けには大きなテーブル付きボックス席、2Fの『スピカテラス』ではお子さまも遊べる大型ソファ風フリースペースもあります。もちろん、オムツ替えスペースを備え、ベビーカーも搭載可能です。今までにない船旅をお楽しみいただけると思います」と語った。

川西さんが好きな瀬戸内の魅力を尋ねると、
「瀬戸内海には美しい風景や集落、古い歴史があるだけでなく、アート活動など新しく若い人たちの歓声がたくさん息づいています。こんな刺激的な地域は世界的にも大変珍しい。地中海やカリブ海にもこんな地域はありません。美しさ、古さ、新しさが共存する瀬戸内海地方はコロナ収束後もすぐに立ち直るでしょう。『シースピカ』はそのお手伝いをしたいです」と答えてくれた。


瀬戸内 多島美 多島美が美しい瀬戸内エリア

この夏、SEA SPICAで新しい瀬戸内を!

瀬戸内観光型高速クルーザー「SEA SPICA」は2020年夏のデビューを目指して現在造船中。せとうちパレットプロジェクトwebサイト(https://www.setouchi-palette.jp)ではシースピカの造船過程をアンバサダーのSTU48がレポートしているので、ぜひチェックしてみよう。

この夏、新しい潮風が瀬戸内海を駆け抜ける!


シースピカ公式webはこちら


著者紹介

村上悠太

1987年鉄道発祥の地新橋生まれ、JRと同い年の鉄道写真家。
交通新聞社刊「鉄道ダイヤ情報」では「ユータアニキ」としてあらゆる現場で鉄道を支える「鉄道HERO」たちの取材を続ける。元々旅好きから写真を始めたので、乗り物に乗って旅をしながら写真を撮るのが大好き。

  • 取材日:2020年3月27日
  • 写真/村上悠太(特記のものを除く)
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