「トクトクきっぷ」の買い方を追究
これまで各地の「トクトクきっぷ」を紹介してきました。トクトクきっぷは、使い方や有効日数がさまざまで、上手に活用するためにはルールをおさえることが重要です。加えて、きっぷによって、発売箇所や購入方法も異なります。
そこでエリア別、方法別に「トクトクきっぷ」の買い方を紹介していきます。第4弾はJR西日本エリア編です!
トクトクきっぷとは?
トクトクきっぷは、正式名称を「特別企画乗車券」といい、ざっくり説明すると「列車がお得に利用できるJRのきっぷ」です。JR西日本では「トクトクきっぷ」と呼ばれるなど、会社によって呼び方は少しずつ異なるものの、ルールはおおむね共通しています。
また、トクトクきっぷの種類は、大きく以下の5つに分けられます。
- 回数券タイプ:新幹線や特急列車等のきっぷが複数枚綴りになったもの。券面に書かれた駅間のどちらから利用してもよいため、グループのほか、往復利用などにおすすめです。
- 片道タイプ:早めの購入で割引になるタイプ。旅行の計画が定まっている人向け。最近はチケットレスを含めて、ネット限定タイプも増えています。
- 往復タイプ:「ゆき」と「かえり」がセットになったもの。「ゆき」と「かえり」で経路が違うタイプも含みます。
- フリータイプ:指定されたエリアが乗り放題になるきっぷ。「乗りつぶし」の強い味方。JR以外の鉄道会社やバスなどが対象エリアに含まれているものも多いです。
- 往復+フリータイプ:「往復タイプ」と「フリータイプ」が合わさったもの。往復部分は新幹線や特急列車に乗車できるタイプが多く、目的エリアまでは効率よく移動し、現地で濃密に乗って遊びたい人向けです。
上記のほかに、観光施設への入場券がセットになった往復タイプなどもあります。
まず利用したいトクトクきっぷを探そう
まずは旅行で利用したい、利用できそうなトクトクきっぷを探しましょう。探し方は、
- JR時刻表内の「JRのトクトクきっぷコーナー」
- 「JR西日本のウェブサイト」
の2通りがあります。
JR時刻表の「JRのトクトクきっぷコーナー」
JR時刻表の「ピンクのページ」には、トクトクきっぷが「通年で発売されているもの」「期間限定で発売されているもの」に分かれて収録されており、きっぷの概要や主な区間の料金、売り場などがまとめられています。
フリータイプの場合は、使えるエリアが図で示されているため、見やすさも抜群です。
最大の利点は「時刻表に載っている」ことに尽きます。旅程づくりと、利用きっぷの検討が並行して進められてしまうのです!
JR西日本のウェブサイト
JR西日本のトクトクきっぷを検索できるページがあります。「トクトクきっぷ検索」機能では、「出発地」「目的地」、「キーワード」のいずれかを入力することで、該当するトクトクきっぷ一覧が表示されます。
ある程度行程が決まっているときに「使えそうなトクトクきっぷはないかな~」といった使い方ができます。「みどりの窓口」で扱っていないトクトクきっぷも掲載されています。
JR6社共通のトクトクきっぷの購入方法
利用したいトクトクきっぷが決まれば、いよいよ購入です。以下では、購入方法別に発券までの流れを解説します。
JR6社共通のトクトクきっぷの購入方法
みどりの窓口
最も初心者向けの購入方法は、係員と対面でやり取りできる「みどりの窓口」です。
ここではJR全線の普通列車が5回(5日間)乗り放題になる「青春18きっぷ」を例に、手順を説明します。
みどりの窓口に行く前に~2つの「期間」とエリアを確認~
「あえて書くことか?」と突っ込まれそうですが、みどりの窓口を訪ねる前に、きっぷの利用可能日を確認しましょう。
というのも、発売・利用期間が「通年」であっても、多くの人が旅行に出かける期間を利用日から外しているきっぷが少なくないからです。これらのシーズンが「利用除外日」である場合、JR時刻表のピンクのページでは「多客期×」の記号が付いています。
今回例に挙げた「青春18きっぷ」については、特に注意が必要で、春休み、夏休み、冬休みといった長期休暇シーズンのみが利用期間に該当します。
併せて確認したいのが「発売期間」です。青春18きっぷは、シーズンごとの「利用期間」の10日前には、それぞれ発売を終了します。そのため利用期間ギリギリになってからでは買うことができません。その代わり、利用開始日の10日前から発売しているため、お出かけする見込みがある方は、早めに買っておきましょう。
なお、多くのトクトクきっぷは通常のきっぷ同様利用開始日の1か月前から発売しています。
そして何より重要なのが「発売箇所」です。青春18きっぷは、全国がフリーエリアの対象であるため、みどりの窓口であれば、どこでも購入できるものの、一般的なトクトクきっぷは、きっぷが利用できるエリアで発売していることが非常に多いです。
いざ窓口へ~支払い方法は2種類~
期間や発売箇所を確認したら、窓口に赴きましょう。あとは係員に「青春18きっぷ」を購入したい旨を伝え、発券に進むだけです。
最近は、PayPayをはじめとしたスマホ決済など、支払い方法の多様化が進んできましたが、「みどりの窓口」では、現金またはクレジットカードのみの扱いになるので、スマホ決済を日常的に使っている方は、お財布の中を確認しておきましょう。
なお、「みどりの窓口」は駅や季節によって混雑し、発券までの時間が読めないこともあります。加えて、設置されている駅自体も少なくなってきました。
この方法で購入できる主なきっぷ
- 立山黒部アルペンきっぷ
- 高山本線シニアおでかけきっぷ
- レール&レンタカーきっぷ
- 2枚きっぷ[自由席](博多駅~小倉駅(北九州市内)の在来線特急列車普通車自由席回数券)
みどりの窓口のように使える券売機
最近では「みどりの窓口」の代わりに、「みどりの券売機プラス」のように、オペレーターとやり取りしながら、きっぷを発券できる券売機が全国で増えています。
「みどりの窓口」に準じた方法できっぷが買えますので、機械操作に慣れていない方にはおすすめです。
旅行会社
みどりの窓口が近くにないけど対面で買いたい人向け
旅行会社というと、宿ときっぷがセットになったパック商品、はたまた添乗員が同行するツアー商品を買い求める場所と思いがちですが、以下のサイトに掲載されている旅行会社ではJRのきっぷも扱っており、発売箇所に「主な旅行会社」と書かれているトクトクきっぷも購入可能です。
駅から離れた地域に住んでいる方、また近くの駅に「みどりの窓口」がない方は、ショッピングモールなどに入っている旅行会社のカウンターを訪ねるのもおすすめです。「みどりの窓口」同様に、対面で発券手続きが行えます。
なお、発売エリアについては、みどりの窓口の発売エリアとおおむね一致します。また、旅行会社のカウンターの場合は、旅行商品の相談に来られる方が多く、カウンターがふさがっていると相当の間待つ点だけは気を付けましょう。
旅行会社だけで扱っているトクトクきっぷがある
ここまでは「旅行会社で買えるトクトクきっぷ“も”ある」と説明してきましたが、世の中には「旅行会社でしか買えないトクトクきっぷ」も存在します。JR西日本エリアでは「県内宿泊者用自由周遊きっぷ」が該当します。旅行会社で在住県内の宿泊券を予約した人だけが購入できるフリータイプのきっぷで、JR西日本エリアの京都、大阪、兵庫以外の各県で扱いがあります。
詳細は旅行会社のサイトやパンフレットなどに載っています。
この方法で購入できる主なきっぷ
- 県内宿泊者用自由周遊きっぷ
JR西日本のトクトクきっぷの購入方法
トクトクきっぷの購入方法としては、「駅の窓口」「旅行会社」といった対面での販売に加えて、駅の「みどりの券売機」、インターネット予約システム「e5489」など、非対面の販売方法が用意されています。
まずは、JR西日本のトクトクきっぷをこれらで購入する方法を見ていきます。
みどりの券売機
ここでは、先にご紹介した「青春18きっぷ」をみどりの券売機で購入するとします。
指定席券売機でのトクトクきっぷ購入の流れ
- 1.券売機の最初の画面で「トクトクきっぷ」を選択(券売機によっては「特急回数券・割引きっぷなど」)
- 2.「青春18きっぷ」を選択
- 3.利用開始日、利用人数、購入枚数などを必要に応じてを選択
- 4.支払い
支払い方法は「現金」「クレジットカード」から選べるうえに、「領収書」も発行できるので、ビジネス利用でも問題ありません。
なお、青春18きっぷについては、利用期間があらかじめ指定されているため、「利用開始日」は、任意の日付を選んでも差し支えありません。
また、「みどりの券売機」であっても、みどりの窓口同様に、一般的なトクトクきっぷは、きっぷが利用できるエリアで発売していることが非常に多いです。
この方法で購入できる主なきっぷ
- 新幹線よかよかきっぷ(e5489も対応)
- 金沢自由席往復きっぷ、富山自由席往復きっぷ(e5489も対応)
- 南紀特急回数券
e5489
JR西日本エリアのトクトクきっぷは、「窓口で買えない」タイプが非常に多く、「みどりの券売機、ネット予約システム限定」または「ネット予約システム限定」で多様な商品展開がなされています。ここ最近では、インターネット予約システム「e5489」限定での扱いに移行している商品が増え、みどりの窓口で購入できるものが少なくなってきました。
実際、JR西日本のウェブサイトでトクトクきっぷ一覧を表示すると、商品名の頭に「【e5489専用】」と付いているものがずらりと並び圧倒されます。また、きっぷ一覧で「【おとなび会員限定】」が付いている商品は、50歳以上であれば無料で入会できる会員組織「おとなび」対象のトクトクきっぷで、購入方法はe5489経由に限定されています。
そのため、JR西日本エリアをトクトクきっぷで旅するにあたっては、e5489を使いこなせることが前提といっても過言ではないでしょう。
ここでは、列車&フェリーで移動し松山・広島地区を周遊できる「松山・広島割引きっぷ」を例にして、「e5489」でのきっぷ購入方法を紹介します。
なお、e5489の利用にあたっては、JR西日本の会員サービス「WESTER」へ登録するのがおすすめなので、下準備として先に済ませておきましょう。
「e5489」でのトクトクきっぷ予約の流れ
- 1.トクトクきっぷのなかから「松山・広島割引きっぷ」を選び「予約する」をクリック
- 2.「きっぷ選択」「ご利用区間」「ご利用日時」を選択し、「検索」をクリック
- 3.乗車する列車や座席の種類を選択し「選択する(新規予約)」をクリック
- 4.「きっぷの種類」に該当するトクトクきっぷが表示されていることを確認し、「選択」をクリック(この場合は、「松山・広島割引きっぷ」)
- 5.座席や決済方法などを選択し、クレジットカードの場合は「決済画面に進む」を選択
- 6.決済すると同時に、予約も完了
上記では、クレジットカードの例を示しましたが、支払い方法は以下より選択できます。
- クレジットカード
- コンビニ払い(現金のみの場合があります)
- 金融機関(ATM、ネットバンキング)
- 駅での支払い(みどりの窓口、指定席券売機)
上記のうち、クレジットカードは「申し込み」と同時に決済が行われ、「購入」も完了します。また、コンビニ、金融機関、駅での支払いを選択した場合は、インターネットで申し込んだ段階では「予約」の扱いになり、支払い期限が設定されています。期限を過ぎると自動的にキャンセルとなるため、クレジットカード払いを強く推奨します!
支払いが完了したトクトクきっぷは、以下のみどりの窓口・券売機で受け取ります。なお、支払い方法で「駅」を選択した場合は、きっぷの購入と発券が同時に行われます。
こうしたネット予約システムには、嬉しいポイントが2つあります。
1つ目は、エリア外でも受け取れる点です。
「e5489」で申し込んだきっぷは、きっぷのエリアに限らず、以下の駅で受け取りができます。
2つ目は、きっぷの購入こそ、期限までに済ませる必要がありますが、きっぷの受け取り自体は「利用開始まで」で良い点です。事前に決済まで済ませておけば、現地で利用直前に指定席券売機で発券、という手順を踏むことができます。
e5489で予約したきっぷを指定席券売機で発券する流れ
- 1.券売機の最初の画面で「予約したきっぷのお受け取り」を選択
- 2.「JR西日本5489サービス」を選択
- 3.案内に沿って進む
- 4.発券
クレジットカード払いの場合、きっぷの受け取りに際しては、実際に使用した「クレジットカード」が必要になります。旅行中はお財布のなかをすっきりさせる人も多いと思いますが、「カード、家に置いてきちゃった!」とならないよう、「いつも使っているカード」で決済しましょう。
この方法で購入できる主なきっぷ
- WEB早特(特急列車の早割サービス)
- 城崎温泉・天橋立ぐるりんパス
- こだま指定席きっぷ
JR西日本エリアのうち、山陽新幹線については、JR東海エリア編で紹介した「スマートEX」でも取り扱いがあります。
「tabiwa by WESTER」周遊パス
スマホで完結!チケットレス
冒頭でもご紹介したように、トクトクきっぷにはさまざまなタイプがありますが、もっとも使い勝手がよく、自由に動き回れるのが「フリータイプ」ではないでしょうか。
JR西日本エリアでは、過去には「北陸おでかけパス」を始め、地域単位の周遊きっぷを展開していましたが、いま時刻表の「ピンクのページ」を開くと、それらは掲載されていません。というのも、JR西日本では、こうしたフリータイプのトクトクきっぷを、チケットレスタイプの「『tabiwa by WESTER』周遊パス」へとバージョンアップさせたためです。
「『tabiwa by WESTER』周遊パス」の特徴は、完全なデジタルチケットであり、購入から利用までのすべてがスマートフォンで完結する点です。e5489経由で購入したきっぷと異なり、駅の窓口や券売機に立ち寄る必要もありません。
ここでは、福井県内でも越前エリアに特化したフリータイプの「越前tabiwaパス」を例にして、購入・利用手順を見ていきましょう。
なお、下準備としてお手持ちのスマホにアプリ「tabiwa by WESTER」をダウンロードしておいてください。
「tabiwa by WESTER」でのトクトクきっぷ予約の流れ
- 1.アプリ「tabiwa by WESTER」で「越前tabiwaパス」を選択し、「購入手続に進む」をタップ
- 2.購入枚数や利用日時などを入力し、購入完了
- 3.「チケット管理」をタップし、購入済みチケットの詳細をみる
- 4.「チケットを使う」「利用開始する」を順番にタップ
- 5.現地で公共交通機関や施設を利用する際に、画面を見せるだけ!
なお、「『tabiwa by WESTER』周遊パス」のうち、「せとうちエリア」のいくつかは、スマホで完結する「通常タイプ」と「ICOCAでGOタイプ」から選べるもの、または後者しか選べないものがあります。
「ICOCAでGOタイプ」は、事前に手持ちのICOCAと周遊パスを紐づけておくことで、ICOCAが周遊パス代わりになるタイプで、自動改札を使えるメリットがあります。
この方法で購入できる主なきっぷ
- 北陸おでかけtabiwaパス
- 神戸・姫路デジタルパス(「ICOCAでGOタイプ」のみ)
- 岡山・倉敷tabiwaぐるりんパス(「通常タイプ」 「ICOCAでGOタイプ」から選択可)
JR西日本エリアのトクトクきっぷを買って、お得な旅を
今回は、JR西日本エリアのトクトクきっぷの購入方法を解説しました。
きっぷによって選べる購入方法は異なりますので、利用するトクトクきっぷの「発売箇所」を確認するのだけは、お忘れなく!
著者紹介
- ※文:蜂谷あす美
- ※掲載されているデータは2023年8月現在のものです。